行政書士の使命

行政書士は、書類を作るだけの仕事ではありません。

行政書士法は、令和8年1月1日施行の改正により、第1条の見出しを「行政書士の使命」とし、行政書士の役割を法律上の使命として明確にしました。行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、国民の利便に資し、国民の権利利益の実現に資することを使命としています。(e-Gov 法令検索)

離婚、相続、契約、許認可、内容証明、公正証書。暮らしや事業の大事な場面では、口約束だけでは足りないことがあります。行政書士は、その内容を確認し、必要な書面に整える専門職です。

目次

行政書士法改正で明確になったこと

令和8年1月1日施行の行政書士法改正では、行政書士の使命だけでなく、職責も明文化されました。

行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令と実務に精通し、公正かつ誠実に業務を行わなければなりません。また、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用などを通じて、国民の利便の向上と業務の改善進歩を図るよう努めることも定められました。(日本行政書士会)

つまり、行政書士には、単に依頼された書類を作るだけでなく、法令と実務に基づいて、依頼者が後で困りにくい形に整える責任があります。

行政書士が作成できる書類

行政書士は、官公署に提出する書類のほか、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成を業務としています。日本行政書士会連合会は、権利義務に関する書類の例として、各種契約書、遺産分割協議書、念書、示談書、協議書、内容証明などを挙げています。(e-Gov 法令検索)

離婚の場面でいえば、行政書士が関わる中心は、離婚協議書、離婚公正証書の原案、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、親子交流などの約束ごとを、書面として整理することです。

夫婦で話し合いができている場合でも、口約束だけでは不安が残ります。

毎月いくら支払うのか。
いつまで支払うのか。
どの口座に振り込むのか。
進学費用や高額な医療費はどうするのか。
財産分与は何を、いつ、どの方法で渡すのか。

こうした内容は、あいまいなままにせず、書面に残す必要があります。

離婚で行政書士ができること

行政書士は、協議がまとまっている離婚について、夫婦で決めた内容を離婚協議書や公正証書にするための書面作成を行います。

たとえば、次のような内容です。

養育費の金額、支払日、支払期間、振込先
財産分与の金額、支払期限、支払方法
慰謝料や解決金の金額、支払方法
年金分割の合意
親子交流の基本的な取り決め
住まい、荷物、車、保険などの整理
清算条項
強制執行認諾文言付き公正証書にする内容

離婚届を出す前に、これらを整理しておくことで、離婚後の支払い、子どもの生活、お金の清算が見えやすくなります。

行政書士ができないこと

行政書士は、弁護士ではありません。

相手方との交渉代理、慰謝料や財産分与の争いについての代理、親権や監護をめぐる争いの代理、調停や訴訟の代理はできません。

弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件、非訟事件、審査請求等の不服申立事件その他一般の法律事件について、鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを禁止しています。(e-Gov 法令検索)

そのため、次のような場合は、弁護士へ相談する場面です。

相手が離婚に応じない
慰謝料の金額で争っている
親権や監護で対立している
財産分与の対象や金額で争っている
相手と直接話すことができない
DV、脅し、強い支配がある
調停や裁判になっている

行政書士の役割は、争いを代理して解決することではありません。

夫婦で決めた内容、または決められる状態にある内容を、後で確認できる書面に整えることです。

離婚協議書を作る意味

離婚協議書は、離婚後の約束を確認する書面です。

離婚届を出せば、夫婦関係は終わります。しかし、養育費、財産分与、慰謝料、住まい、年金分割、親子交流の約束は、離婚届だけでは残りません。

離婚協議書を作ることで、夫婦が何を合意したのかを確認できます。

特に、お金の支払いがある場合は、金額、期限、支払方法を明確にしておく必要があります。

「できる範囲で支払う」「子どもが自立するまで支払う」「必要なときに相談する」といった書き方では、後で争いになりやすくなります。

公正証書にする意味

養育費、分割払いの財産分与、慰謝料など、将来にわたって支払いが続く約束は、公正証書にすることを検討します。

強制執行認諾文言付き公正証書にしておくと、支払いが滞った場合に、改めて裁判をしなくても強制執行を申し立てることができる場合があります。

行政書士は、公正証書にする前の内容整理、公正証書原案の作成、公証役場との文案確認の支援を行います。

公正証書は、公証人が作成する公文書です。行政書士が作るのは、そこに至るための内容整理と原案です。

行政書士の徽章に込められた意味

行政書士の徽章は、秋桜、つまりコスモスの花弁の中に「行」の文字を配したものです。

日本行政書士会連合会は、この徽章は「調和」と「真心」を表すものと説明しています。(日本行政書士会)

調和とは、何でも丸く収めるという意味ではありません。

決めるべきことを決める。
残すべき約束を書面に残す。
専門外のことは、弁護士、司法書士、税理士など適切な専門家につなぐ。

その線引きをしたうえで、依頼者の生活や手続が後で困りにくい形になるよう整えることです。

木下行政書士事務所で扱う離婚業務

木下行政書士事務所では、主に協議離婚に関するお金の約束ごとを法律文書として作成します。

中心になるのは、離婚協議書と離婚公正証書です。

扱う内容は、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、親子交流、住まい、住宅ローン、清算条項などです。

一方で、相手との交渉、夫婦の仲裁、親権争い、調停や裁判の代理、DV案件の直接交渉は行いません。

争いがある場合は、弁護士への相談が必要です。

不動産登記が必要な場合は司法書士へ、税金の確認が必要な場合は税理士へつなぐことがあります。

まとめ

行政書士の使命は、法律文書を通じて、国民の権利利益の実現に資することです。

令和8年1月1日施行の行政書士法改正により、その使命と職責は法律上さらに明確になりました。

離婚の場面で行政書士が行うのは、夫婦の争いを代理することではありません。

夫婦で決めた養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、親子交流などの約束を、後で確認できる書面に整えることです。

離婚届だけでは、お金と子どもの約束は残りません。

離婚後に困らないためには、離婚届を出す前に、必要な約束を離婚協議書や公正証書にしておくことが大切です。

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