離婚したいと思う理由と、裁判で離婚が認められる法律上の理由は、同じではありません。
「もう一緒に暮らせない」と感じる理由は、人によって違います。暴力、お金、性格、異性関係、親族、宗教、病気など、生活の中で積み重なった事情があります。
一方で、裁判で離婚を求める場合は、民法770条の離婚原因に当たるかどうかが問題になります。
令和8年4月1日施行後の民法770条では、裁判上の離婚原因は次の4つです。
配偶者に不貞な行為があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
以前あった「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という離婚原因は、令和8年4月1日施行の改正で削除されています。病気や障害がある場合も、現在は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかで考えます。民法等の一部を改正する法律について
人格関係の問題
人格関係の問題とは、暴力、暴言、支配、無視、家庭への無関心など、相手の言動によって夫婦としての信頼が壊れていく場合です。
たとえば、次のような事情です。
暴力を振るう
大声で怒鳴る
酒を飲むと人が変わる
子どもに冷たい
家族の時間を持たない
休日も家庭に関わらない
仕事だけを優先する
家事や育児に関わらない
相手の話を聞かない
家庭の中で無視する
暴力がある場合は、離婚原因として強く問題になります。身体への暴力だけでなく、精神的な虐待、強い支配、脅し、生活費を渡さないことなども、事情によっては「婚姻を継続し難い重大な事由」として問題になります。
暴力や脅しがある場合は、夫婦だけで話し合う前に、安全確保を優先します。必要に応じて、警察、配偶者暴力相談支援センター、弁護士への相談を考えます。
財産関係の問題
財産関係の問題とは、生活費、借金、浪費、仕事、家計管理など、お金をめぐる問題です。
たとえば、次のような事情です。
生活費を渡さない
収入を隠す
浪費する
借金を繰り返す
ギャンブルに使う
職場を転々とする
働く意思がない
他人の保証人になる
家計を見せない
住宅ローンや税金を滞納する
生活費を渡さないことは、悪意の遺棄として問題になる場合があります。夫婦は互いに協力し、扶助する義務を負っています。そのため、正当な理由なく生活費を渡さない、家庭を放置する、相手を生活できない状態に置く場合は、離婚原因になり得ます。
ただし、収入が少ないことだけで直ちに離婚原因になるわけではありません。問題になるのは、働く意思、生活費の分担、借金、浪費、家計への説明、夫婦生活への影響です。
性格関係の問題
性格関係の問題とは、考え方や生活感覚の違いが積み重なり、夫婦としての共同生活が難しくなる場合です。
たとえば、次のような事情です。
思いやりがない
言い方がきつい
怒りっぽい
すぐに逆上する
冷たい
わがままに見える
相手の考えを否定する
話し合いにならない
家庭のことを一緒に考えない
将来の話ができない
性格が合わないというだけでは、直ちに裁判で離婚が認められるとは限りません。
ただし、長い別居、会話の断絶、強い不信、生活の分離、夫婦としての協力関係の消失などが重なると、「婚姻を継続し難い重大な事由」として判断されることがあります。
性格の不一致は、単独の言葉としては広すぎます。実際には、いつから、どのような出来事があり、夫婦関係がどの程度戻りにくい状態になっているのかを整理する必要があります。
性関係の問題
性関係の問題には、不貞行為、夫婦生活の不一致、性的な強要、拒否、異性関係への不信などがあります。
たとえば、次のような事情です。
配偶者以外の人と性的関係を持った
異性関係を隠している
夫婦生活が長く途絶えている
嫌な行為を強いられる
性的な話し合いができない
性的な拒否や不満が長く続いている
不貞行為は、民法770条1項1号の離婚原因です。
不貞行為とは、一般に、配偶者以外の人との性的関係を指します。単なる親しい連絡、食事、好意だけでは、不貞行為そのものとはいえない場合があります。ただし、不貞行為として立証できなくても、異性関係の継続や不信関係が夫婦関係を壊した場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」として問題になることがあります。
また、夫婦であっても性的な強要は許されません。暴力、脅し、支配を伴う場合は、DVとして安全確保を優先する必要があります。
親族関係の問題
親族関係の問題とは、配偶者の親、兄弟姉妹、連れ子、親族づきあいをめぐって、夫婦関係が悪化する場合です。
たとえば、次のような事情です。
姑や舅との不仲
配偶者が自分の親ばかり優先する
親族からの干渉が強い
実家との関係で夫婦が対立する
連れ子との関係がうまくいかない
親族の問題を配偶者が放置する
親族との不仲そのものが、直ちに離婚原因になるわけではありません。
問題になるのは、配偶者が夫婦関係を守る行動を取ったかどうかです。親族との対立があっても、配偶者が間に入り、住まい、距離、連絡方法を整えていれば、婚姻関係が続けられる場合があります。
反対に、配偶者が親族の言動を放置し、一方だけに負担をかけ続けた場合は、夫婦関係そのものの問題として扱われます。
思想・宗教関係の問題
思想や宗教の違いは、それだけで離婚原因になるものではありません。
人には、思想、信条、宗教の自由があります。
ただし、信仰や思想が家庭生活に強く影響し、夫婦としての共同生活が成り立たない場合は、離婚原因として問題になることがあります。
たとえば、次のような事情です。
宗教活動を家庭より常に優先する
家計から多額の支出がある
子どもの生活や学校行事に大きな影響が出る
配偶者に信仰を強く求める
親族との儀礼をめぐって強い対立が続く
話し合いができない状態が長く続く
裁判で問題になるのは、宗教そのものの良し悪しではありません。
宗教や思想の違いによって、夫婦の共同生活が現実にどの程度難しくなっているかです。
病気関係の問題
病気関係の問題とは、精神疾患、身体疾患、依存症、認知症、重い障害などにより、夫婦生活の継続が難しくなる場合です。
以前の民法には、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という離婚原因がありました。しかし、令和8年4月1日施行の改正で、この規定は削除されています。
現在は、病名だけで離婚できるかどうかを判断するのではなく、次の事情を見ます。
療養が長期に及んでいるか
回復や生活再建の見通しがあるか
夫婦としての会話や協力が残っているか
看護や介護の負担が一方に集中しているか
離婚後の療養や生活の見通しがあるか
子どもの生活にどのような影響があるか
病気そのものには、通常、本人の違法性はありません。そのため、病気になったこと自体を理由に慰謝料を請求することは難しいです。
ただし、病気とは別に、暴力、浪費、生活費不払い、不貞行為などがある場合は、その行為について別に検討します。
離婚の理由と法律上の整理
離婚を考える理由は、生活の中から出てきます。
一方で、法律上は、次のどれに当たるかを整理します。
不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
婚姻を継続し難い重大な事由
実際の離婚では、一つの理由だけで整理できないことが多くあります。
暴力と生活費不払い。
不貞と別居。
借金と性格の不一致。
親族問題と夫婦の会話不足。
病気と生活の破綻。
このように、複数の事情が重なって、夫婦関係が戻りにくくなります。
調停では何を整理するか
家庭裁判所の離婚調停では、離婚そのものだけでなく、子どもやお金の問題も一緒に話し合うことができます。
主な整理項目は次のとおりです。
離婚するかどうか
親権・監護
養育費
親子交流
財産分与
慰謝料
年金分割
婚姻費用
住まい
住宅ローン
離婚原因を責め合うだけでは、調停は進みにくくなります。
何があったのか。
いつから夫婦関係が悪くなったのか。
子どもの生活をどうするのか。
お金をどう分けるのか。
離婚後の住まいをどうするのか。
これを分けて考える必要があります。
裁判所も、離婚調停では、離婚そのもののほか、親権、親子交流、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料などを一緒に話し合えると説明しています。夫婦関係調整調停(離婚)
まとめ
離婚を決意する理由と、法律上の離婚原因は同じではありません。
生活の中では、暴力、お金、性格、性関係、親族、宗教、病気など、さまざまな理由があります。
裁判で離婚を求める場合は、民法770条の離婚原因に当たるかどうかが問題になります。
令和8年4月1日以降は、裁判上の離婚原因は、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他婚姻を継続し難い重大な事由の4つです。
「強度の精神病」は独立した離婚原因ではなくなっています。
離婚を進める場合は、感情の理由をそのままぶつけるのではなく、法律上の整理、子どもの生活、お金、住まい、将来の支払いを分けて考えることが大切です。
