夫婦の親族との不仲は、それだけで直ちに離婚原因になるわけではありません。
問題になるのは、親族との不和そのものではなく、その不和によって夫婦関係が回復しがたい程度まで壊れているかどうかです。
現在の民法770条では、裁判上の離婚原因として、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他婚姻を継続し難い重大な事由が定められています。親族との不仲は、通常、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかの中で判断されます。e-Gov法令検索・民法 (e-Gov 法令検索)
親族との不仲をめぐる判断例
| 事例 | 別れたい理由 | 別れない理由・反論 | 判断の要点と結果 |
|---|---|---|---|
| 1 | 昭和40年婚姻。妻は夫の母および姉と不和となり、生活関係もすべて別になった。昭和53年に別居。夫が離婚を求めた | 妻は、11歳、12歳の2人の娘がいることを主張した。また、夫の姉による度重なる心ない言動、節度のない男性との交際、夫の母による嫌がらせなどに対し、夫が自覚を持たず、ふがいない態度を取ったことは許されないと主張した | 第1審は夫の請求を認めたが、控訴審は夫の請求を棄却した。裁判所は、紛争は夫婦間固有のものではなく、家族に対する配慮や心遣いを欠く姉の言動が原因であるとした。また、両親の離婚を嫌う2人の娘の心情に思いをいたし、姉を別居させるなどして家庭内融和を図るべきであるとした。東京高裁昭和60年12月24日判決・判例時報1182号82頁 |
| 2 | 妻が夫の低収入に不平を持ち、住まいをめぐって夫の母と口論し、母の土産を投げつけたなどとして、夫が離婚を求めた | 妻は、第三者ともいうべき夫の母が夫婦関係に介在していること、夫が母に絶対服従していること、2児の父としての自覚がないこと、外出をはばかるほどの暴力があったことを主張した | 婚姻関係の破綻の程度と責任が問題となった。裁判所は、夫婦関係はいまだ破綻しているとはいえず、夫の有責性が高いとして、夫の離婚請求を棄却した。東京高裁昭和56年12月17日判決・判例時報1036号78頁 |
| 3 | 妻の両親が夫を蔑視し、軽視し、冷遇したとして、夫が離婚を求めた。昭和26年婚姻、昭和37年別居、昭和41年に夫は他の女性と関係を持った | 妻は、子どもが1人いること、夫が有責配偶者であることを主張した | 裁判所は、妻として通常行うべき責務を尽くしていないとして、夫の離婚請求を認めた。夫が他の女性と関係を持ったのは、婚姻関係が破綻してから4年経過後であると判断された。山形地裁昭和45年11月10日判決・判例時報615号63頁 |
| 4 | 夫の両親が妻に小言を言い、姑が妻の日記を盗み読みした後、夫の両親が妻に一層冷淡になったとして、妻が離婚を求めた。婚姻期間は約2年 | 夫は、妻を虐待したり冷遇したりしていないと主張した | 裁判所は、離婚請求を認めた。破綻の端緒は夫の両親にあるが、夫の冷淡で非協力的な態度にも原因があるとした。一方で、夫の両親と妻との不和は世上よくあることであり、両親に損害賠償責任はないとした。慰謝料10万円、財産分与5万円が認定された。名古屋地裁岡崎支部昭和43年1月29日判決・判例時報515号74頁 |
親族との不仲で見られる事情
親族との不仲が問題になる場合、裁判では次のような事情が見られます。
夫婦間の問題か、親族との問題か
親族の言動の内容
同居の有無
別居期間
夫または妻がどのように対応したか
親族の過干渉を放置したか
暴力や悪意の遺棄があるか
子どもへの影響
夫婦関係の回復可能性
親族との関係が悪いだけでは、離婚原因として足りないことがあります。
裁判で重く見られるのは、親族との不和に対して、配偶者がどのように対応したかです。
配偶者の態度が問題になる
親族との不仲では、親族本人よりも、配偶者の態度が問題になることがあります。
たとえば、夫の母や姉と妻が不和になった場合でも、夫が間に入り、生活環境を整え、妻や子どもを守る対応をしていれば、夫婦関係の破綻までは認められにくいことがあります。
一方で、配偶者が親族の言動を放置したり、相手を一方的に責めたり、同居の負担を押しつけたりした場合は、夫婦関係の破綻につながることがあります。
親族との不和は、夫婦の外側の問題に見えます。
しかし、離婚判断では、その問題に対する配偶者の向き合い方が重視されます。
同居親族との不和
夫婦が親族と同居している場合、生活の距離が近いため、衝突が起きやすくなります。
食事、家事、子育て、生活費、介護、来客、宗教、冠婚葬祭など、日常の小さな違いが積み重なることがあります。
この場合に大切なのは、誰が悪いかを決めることだけではありません。
別居できるか。
生活空間を分けられるか。
夫婦だけで話し合える時間があるか。
子どもに悪影響が出ていないか。
配偶者が一方の親族だけに従っていないか。
こうした点を整理する必要があります。
子どもがいる場合
子どもがいる場合は、夫婦と親族の問題だけでは終わりません。
子どもが祖父母や親族との不和を見続けることがあります。親が親族との間で責められている場面を、子どもが見ている場合もあります。
一方で、子どもが両親の離婚を望まない場合もあります。
2026年4月1日施行の民法等改正では、父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子どもの心身の健全な発達を図るため、子どもを養育する責務を負い、子どもの人格を尊重しなければならないことが明確化されています。親族との不和がある場合でも、子どもの生活と心情を中心に考える必要があります。(法務省)
離婚協議で整理すること
親族との不仲を理由に離婚を考える場合でも、離婚原因だけを話しても解決しません。
離婚する場合は、離婚後のお金、子ども、住まいを整理する必要があります。
協議離婚では、次の内容を分けて考えます。
別居中の婚姻費用
財産分与
慰謝料の有無
親権・監護
養育費
親子交流
住まい
住宅ローン
年金分割
清算条項
親族との不仲がある場合、住まいの扱いが特に重要になります。
夫婦のどちらが家を出るのか。子どもはどこで暮らすのか。実家に戻るのか。賃貸住宅を借りるのか。親族と距離を置ける生活環境を作れるのか。
ここを決めないまま離婚の話を進めると、生活が不安定になります。
まとめ
親族との不仲は、それだけで直ちに離婚原因になるわけではありません。
裁判では、親族との不和によって夫婦関係が回復しがたい程度まで壊れているかが見られます。
また、親族との問題に対して、配偶者がどのように対応したかも重要です。
配偶者が親族の言動を放置した場合、夫婦の一方にだけ我慢を求め続けた場合、生活環境を整える努力をしなかった場合には、夫婦関係の破綻につながることがあります。
一方で、親族との不和があっても、夫婦関係の修復可能性がある場合や、親族との距離を取ることで生活を立て直せる場合は、離婚請求が認められないこともあります。
親族との不仲を理由に離婚を考える場合は、感情的な対立だけでなく、別居、住まい、子ども、お金、親族との距離の取り方を分けて整理することが大切です。
