財産分与と慰謝料は分けて考える
離婚のお金では、財産分与と慰謝料が同じものとして扱われることがあります。しかし、性質は別です。財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際に分け合う制度です。法務省も、財産分与を「夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度」と説明しています。
一方で、慰謝料は、離婚の原因について精神的苦痛がある場合に問題となるお金です。不貞、暴力、精神的な虐待などが典型です。離婚すれば必ず慰謝料が発生するわけではありません。
そのため、「財産分与と慰謝料の平均額」を見るときは、まず財産分与の金額なのか、慰謝料を含む金額なのかを分けて考える必要があります。
司法統計は平均額ではなく支払額の分布で見る
裁判所の司法統計では、令和6年中に全国の家庭裁判所が扱った家事事件について、財産分与の支払額別の件数が公表されています。対象は、「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件です。ここでいう事件には、調停離婚、協議離婚届出の調停成立、調停に代わる審判による審判離婚が含まれます。
令和6年司法統計では、対象事件23,966件のうち、財産分与の取決めがあったものは8,258件です。支払額の内訳は次のとおりです。
| 財産分与の支払額 | 件数 |
|---|---|
| 100万円以下 | 1,558件 |
| 200万円以下 | 921件 |
| 400万円以下 | 1,056件 |
| 600万円以下 | 707件 |
| 1000万円以下 | 989件 |
| 2000万円以下 | 910件 |
| 2000万円を超える | 507件 |
| 総額が決まらず・算定不能 | 1,610件 |
この統計から、正確な平均額を出すことはできません。金額が「100万円以下」「200万円以下」という幅で示されているためです。また、「総額が決まらず・算定不能」の事件も含まれています。
ただし、金額が区分されている事件だけを見ると、400万円以下の事件が多くあります。1000万円以下まで含めると、かなり広い範囲を占めます。一方で、2000万円を超える事件もあります。財産分与は、婚姻期間、預貯金、不動産、退職金、住宅ローン、夫婦それぞれの財産状況によって大きく変わります。
婚姻期間が長いほど金額は大きくなりやすい
財産分与は、単に結婚していた年数だけで決まるものではありません。しかし、婚姻期間が長くなるほど、夫婦で築いた財産が増え、不動産や退職金が問題になることがあります。
短い婚姻期間でも、預貯金、不動産、車、保険、退職金見込みなどがあれば、財産分与の確認は必要です。反対に、婚姻期間が長くても、分ける財産が少なければ、金額は大きくなりません。
平均額だけを見て判断すると、自分のケースに合わない可能性があります。まず見るべきものは、平均額ではなく、夫婦の財産一覧です。
令和8年4月1日から財産分与の請求期間は5年
令和8年4月1日施行の民法改正により、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は、離婚後2年から5年に延長されました。ただし、令和8年3月31日以前に離婚した夫婦については、従前どおり離婚後2年です。(法務省)
また、改正後は、財産分与で考慮する要素が明確になりました。婚姻中に取得又は維持した財産の額、財産の取得又は維持への寄与の程度、婚姻期間、婚姻中の生活水準、協力及び扶助の状況、年齢、心身の状況、職業、収入などが考慮されます。寄与の程度は、原則として夫婦対等、つまり2分の1ずつとされています。
この改正により、「離婚後に落ち着いてから財産分与を考える」余地は広がりました。しかし、5年あるから後でよいという意味ではありません。通帳、不動産、保険、退職金、住宅ローンなどの資料は、時間が経つほど確認しにくくなります。
年金分割は財産分与とは別に確認する
年金分割は、財産分与とは別の手続きです。婚姻期間中の厚生年金記録を、当事者間で分割する制度です。日本年金機構は、合意分割について、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できる制度と説明しています。
年金分割の請求期限も、原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。ただし、令和8年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内です。
年金分割の効果は、厚生年金の報酬比例部分に限られます。国民年金の老齢基礎年金などには影響しません。
離婚協議書や公正証書に残すべきこと
財産分与や慰謝料を決めるときは、金額だけでなく、支払方法まで決める必要があります。一括払いなのか、分割払いなのか。いつまでに払うのか。振込先はどこか。遅れた場合にどうするのか。ここまで書面にしておかないと、後で確認しにくくなります。
年金分割をする場合は、按分割合も確認します。日本年金機構は、合意分割の請求に必要な書類として、公正証書の謄本、認証を受けた私署証書、又は年金分割の合意書などを挙げています。
相手との間で金額や責任を争っている場合は、弁護士に相談する場面です。話し合いで条件がまとまる見込みがある場合は、離婚協議書や公正証書にして、後から確認できる形に残すことが大切です。
