不倫は法的には損害賠償の問題です|感情論を排した解決への道【長崎】

不倫という言葉は、日常では広く使われます。

法律上は、主に「不貞行為」と「不法行為」の問題として考えます。

不貞行為とは、配偶者のある人が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の人と性的関係を持つことです。民法770条では、不貞行為は裁判上の離婚原因の一つとされています。e-Gov法令検索・民法 (e-Gov 法令検索)

目次

不倫で損害賠償責任が問題になる理由

不貞行為は、夫婦の平穏な婚姻生活を害するものとして、不法行為責任が問題になります。

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を与えた場合に、その損害を賠償する責任を負うという考え方です。

不貞行為があった場合、不貞をした配偶者に対して慰謝料請求が問題になります。

また、不貞相手に対しても、慰謝料請求が問題になることがあります。

不貞相手に請求できる場合

不貞相手に慰謝料を請求するには、単に交際していたというだけでは足りません。

少なくとも、次の点が問題になります。

不貞行為があったか
相手が既婚者であることを知っていたか
または知ることができたか
不貞関係が始まった時点で夫婦関係が破綻していなかったか
慰謝料請求権が時効にかかっていないか

不貞相手が、既婚者だと知らず、知らなかったことに過失もない場合は、慰謝料請求が認められにくくなります。

また、不貞関係が始まった時点で、夫婦関係がすでに破綻していた場合も、慰謝料請求が認められるかが問題になります。

不貞慰謝料と離婚慰謝料は分けて考える

不倫相手への請求では、「不貞行為そのものによる慰謝料」と「離婚したことによる慰謝料」を分けて考える必要があります。

最高裁平成31年2月19日判決は、不貞相手が単に夫婦の一方と不貞行為をしただけでは、当然に「夫婦を離婚させたこと」について不法行為責任を負うわけではないと判断しています。

不貞相手が離婚慰謝料の責任を負うのは、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をしたなど、特段の事情がある場合に限られるとされています。

つまり、不貞相手に対して常に「離婚した分の慰謝料」まで請求できるわけではありません。

不貞行為そのものの慰謝料なのか、離婚に伴う慰謝料なのかを分けて整理する必要があります。

慰謝料の金額は一律ではありません

不倫慰謝料の金額は、事案によって変わります。

「いくらが相場」と一律に決めることはできません。

裁判で見られやすい事情は、次のとおりです。

婚姻期間
不貞の期間
不貞の回数
不貞の態様
夫婦関係への影響
別居に至ったか
離婚に至ったか
未成熟子がいるか
不貞相手が既婚者と知っていたか
発覚後の対応
謝罪や支払いの有無

一般には、短期間で夫婦関係が修復している場合は低くなりやすく、長期間の不貞、同棲、別居、離婚につながった場合は高くなりやすい傾向があります。

ただし、実際の金額は、証拠と具体的な事情によって判断されます。

証拠が重要になる

不倫慰謝料を請求する場合は、証拠が重要です。

不貞行為は、多くの場合、人目につかない場所で行われます。そのため、性的関係そのものを直接示す証拠まで必要というわけではありません。

次のような資料が、判断材料になることがあります。

ラブホテルに出入りする写真
宿泊を伴う旅行の記録
調査会社の報告書
不貞を認めた発言の記録
メッセージの内容
宿泊施設や交通機関の利用記録
クレジットカード明細

ただし、証拠の集め方には注意が必要です。

相手のスマートフォンを無断で開く、SNSやメールに勝手にログインする、GPSを無断で取り付ける、写真や動画を第三者に広めるといった行為は、別の法的問題を生むことがあります。

慰謝料請求には時効がある

不倫慰謝料を請求する場合は、時効にも注意が必要です。

不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅するとされています。

不貞行為を知った時期。
不貞相手を知った時期。
離婚した時期。
誰に対して何を請求するのか。

これらによって、時効の考え方が問題になります。

慰謝料請求を考える場合は、早めに時系列を整理する必要があります。

請求する前に整理すること

不倫が発覚すると、すぐに相手へ連絡したくなることがあります。

しかし、感情のままに動くと、後で話し合いが難しくなることがあります。

請求を考える前に、次の点を整理します。

不貞行為の証拠があるか
いつから関係が始まったのか
夫婦関係はいつから悪化していたのか
別居しているか
離婚するのか
夫婦関係を戻すのか
慰謝料を誰に請求するのか
子どもの生活をどう守るのか
財産分与や養育費をどうするのか

不倫慰謝料だけを見ていると、離婚後の生活全体が見えなくなることがあります。

離婚する場合は、慰謝料だけでなく、財産分与、養育費、親権・監護、親子交流、年金分割、住まいのことも整理する必要があります。

示談書や合意書にする場合

不倫慰謝料について相手と合意できた場合は、口約束で終わらせず、書面に残します。

書面では、次の内容を整理します。

誰が誰に支払うか
慰謝料の金額
支払期限
一括払いか分割払いか
振込先
支払いが遅れた場合の扱い
接触禁止を入れるか
口外禁止を入れるか
清算条項を入れるか

分割払いにする場合は、支払いが途中で止まることがあります。

その場合に備えて、公正証書にするかどうかも検討します。

代理交渉が必要な場合

不倫慰謝料の請求は、相手との交渉が必要になることがあります。

相手が支払いを拒む場合。
不貞の事実を否認している場合。
慰謝料の金額で争いがある場合。
相手に弁護士が付いた場合。
裁判を見据える場合。

このような場合は、弁護士に相談する場面です。

行政書士は、本人同士で合意した内容を示談書、合意書、離婚協議書、公正証書案に整理することはできます。

一方で、相手との代理交渉や裁判対応はできません。

まとめ

不倫は、法律上は不貞行為や不法行為の問題として扱われます。

不貞行為があれば、不貞をした配偶者や不貞相手に対して慰謝料請求が問題になることがあります。

ただし、不貞相手が既婚者であることを知らず、知らなかったことに過失もない場合は、慰謝料請求が認められにくくなります。

また、不貞相手に対する請求では、不貞行為そのものの慰謝料と、離婚に伴う慰謝料を分けて考える必要があります。

不倫が発覚したときは、感情だけで動かず、証拠、時系列、慰謝料、離婚するかどうか、子ども、お金、住まいを分けて整理することが大切です。

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