離婚で証拠を集めるときに大切なのは、相手を追い詰めることではありません。
何があったのか。
いつ起きたのか。
どの資料で確認できるのか。
離婚条件にどう関係するのか。
この4つを整理することです。
不貞、暴力、生活費の不払い、別居、財産隠しなどは、感情だけで訴えても伝わりにくいことがあります。写真、メッセージ、診断書、通帳、録音、日記などを、時系列に沿って整理しておくと、離婚協議、調停、弁護士相談で説明しやすくなります。
ただし、証拠を取るために何をしてもよいわけではありません。無断でスマートフォンを見る、SNSに勝手にログインする、GPSを取り付ける、性的な画像を保存・拡散する、相手の職場に探りの電話を入れるなどは、別の法的問題を生むことがあります。証拠集めは、法律に触れない範囲で行う必要があります。刑法、不正アクセス禁止法、性的姿態撮影等処罰法などにも注意が必要です。(e-Gov 法令検索)
証拠を集める前に確認すること
証拠を集める前に、まず目的を決めます。
不貞行為を確認したいのか
暴力や暴言を記録したいのか
生活費の不払いを示したいのか
別居の経緯を整理したいのか
財産分与の資料を集めたいのか
養育費や婚姻費用のために収入資料を確認したいのか
目的が決まらないまま相手の行動を追いかけると、証拠集めそのものが目的になってしまいます。
離婚で必要なのは、疑いを増やすことではありません。話し合い、調停、書面作成で使える事実を整理することです。
スマートフォン・メッセージ
スマートフォンには、通話履歴、メッセージ、写真、位置情報、決済履歴などが残っていることがあります。
ただし、相手のスマートフォンを無断で開くことは避けるべきです。
ロックを解除する。
パスコードを盗み見る。
LINEやメールを勝手に見る。
SNSに無断でログインする。
相手のアカウントを自分の端末に同期する。
このような行為は、不正アクセスやプライバシー侵害として問題になることがあります。
自分が受け取ったメッセージ、自分とのやり取り、自分の端末に保存されている資料は、日付と相手が分かる形で保存します。スクリーンショットを残す場合は、前後の会話、日時、相手の表示名が分かるようにしておくと整理しやすくなります。
鞄・財布・領収書
鞄、財布、ポーチ、車内などから、領収書、チケット、ホテルカード、飲食店の明細などが見つかることがあります。
ただし、相手の持ち物を無断で開けて調べることは、トラブルの原因になります。
すでに自宅の共有スペースに置かれているものや、家計の支出確認として自然に目に入るものと、相手の私物を探ることは違います。
領収書や明細を見る場合も、次の点を確認します。
日付
店名
金額
人数や利用内容
支払い方法
ほかの資料とのつながり
領収書1枚だけで、不貞行為が証明できるとは限りません。
ただし、宿泊記録、メッセージ、カード明細、行動記録とつながる場合は、時系列を説明する資料になります。
車の中の資料
車には、ETC利用明細、カーナビ履歴、駐車場の領収書、ガソリン代の明細、車内に残った物などがある場合があります。
ただし、車内を細かく探る場合も注意が必要です。
夫婦共有の車か。
自分も日常的に使っている車か。
相手だけが管理している車か。
車内の物を勝手に持ち出していないか。
ここを考える必要があります。
カーナビ履歴や走行履歴は、行動の手がかりになることがありますが、それだけで不貞行為を証明できるとは限りません。ホテルの出入り写真、宿泊記録、メッセージ、調査報告書など、ほかの資料と合わせて意味を持つことが多いです。
衣類・持ち物
衣類や持ち物に、香水、化粧品、口紅、見慣れない物などが残っていることがあります。
ただし、それだけで不貞行為の証拠になるとは限りません。
仕事中についた可能性。
飲食店や電車内でついた可能性。
友人や同僚との接触でついた可能性。
偶然持ち帰った可能性。
このような説明も考えられます。
衣類や持ち物は、疑いのきっかけにはなります。しかし、それだけで強い証拠と考えない方がよいです。
出張・外泊・帰宅時間
出張、残業、接待、飲み会、ゴルフ、友人との外出などは、不貞の口実として使われることがあります。
ただし、すべてを疑うと、夫婦関係はさらに悪くなります。
確認する場合は、問い詰めるのではなく、事実として必要なことを聞きます。
出張先
宿泊先
日程
同行者
緊急連絡先
帰宅予定
仕事の予定として自然に確認する範囲で足ります。
相手の会社に探りの電話を入れることは避けるべきです。勤務先への不用意な連絡は、相手の名誉や信用、職場での立場に影響し、別のトラブルになることがあります。
日記・メモ
日記やメモは、出来事の流れを整理するために役立ちます。
不審な外出があった日。
生活費が払われなかった日。
暴言があった日。
話し合いをした日。
別居の話が出た日。
子どもの様子が変わった日。
このような事実を、日付とともに記録します。
日記やメモだけで決定的な証拠になるとは限りません。ただし、写真、メッセージ、通帳、診断書、相談記録などと合わせると、時系列の説明に役立ちます。
感情を書き連ねるより、事実を短く残す方が使いやすくなります。
写真・動画
写真や動画は、出来事を視覚的に確認できる資料です。
不貞では、ホテルへの出入りや宿泊を伴う行動が問題になることがあります。
暴力では、けが、壊された物、部屋の状態などが問題になることがあります。
写真や動画を残す場合は、次の点を確認します。
いつ撮ったか
どこで撮ったか
誰が写っているか
何を示す資料か
加工していないか
ただし、性的な画像や動画を保存したり、第三者に送ったり、インターネットに出したりすることは避けるべきです。証拠のつもりでも、別の重大な問題になることがあります。
録音
話し合い、暴言、脅し、不貞を認める発言などは、録音が資料になることがあります。
録音を残す場合は、会話全体の流れが分かるようにします。
自分に都合のよい部分だけを切り取ると、後で信用性が問題になることがあります。
また、相手を挑発して発言させるようなやり方は避けるべきです。
録音を裁判資料として使う場合は、音声だけでなく、文字に起こした反訳文が必要になることがあります。
診断書・相談記録
暴力や精神的な負担がある場合は、医療機関の診断書や受診記録が重要になります。
けがをした場合は、できるだけ早く受診します。
精神的な不調がある場合も、通院記録や診断書が当時の状態を説明する資料になります。
あわせて、警察、DV相談窓口、自治体、弁護士などへの相談記録も残しておくと、後で経過を説明しやすくなります。
暴力やDVのおそれがある場合は、証拠集めより安全確保を優先してください。
通帳・カード明細
お金の流れは、離婚条件を決めるうえで重要です。
通帳、クレジットカード明細、給与明細、源泉徴収票、確定申告書、保険証券、不動産資料などを確認します。
見るべき点は、次のとおりです。
生活費の支払い
不審な支出
宿泊費や旅行費
高額な買い物
預金の移動
借入れ
保険料
住宅ローン
教育費
医療費
財産分与、婚姻費用、養育費では、収入と支出の資料が必要になります。
不貞の証拠だけでなく、離婚後の生活を考えるためにも、お金の資料は整理しておく必要があります。
証拠を取るときに避ける行動
証拠集めで避けるべき行動があります。
相手のスマートフォンを無断で見る
相手のメールやSNSに勝手にログインする
GPSを無断で取り付ける
相手の鞄や財布を無断で調べる
勤務先へ探りの電話を入れる
相手や不倫相手を脅す
相手の家族や職場へ言いふらす
SNSに実名や写真を投稿する
性的な画像や動画を保存・拡散する
証拠を集めるつもりが、こちらの行動を問題にされることがあります。
不貞や暴力が疑われる場合でも、証拠集めは冷静に行う必要があります。
探偵・調査会社を使う場合
不貞の証拠を集めるために、調査会社を使うことがあります。
ただし、調査会社を使えば必ず有利になるわけではありません。
調査費用が高くなることがあります。
証拠として不十分な場合があります。
調査日を誤ると成果が出ません。
調査方法に問題があるとトラブルになります。
依頼する前に、何を証明したいのかを決めます。
不貞行為を証明したいのか。
同棲を確認したいのか。
相手の住所を確認したいのか。
慰謝料請求を考えているのか。
離婚調停を見据えているのか。
目的を決めたうえで、費用と効果を考える必要があります。
証拠は時系列にまとめる
証拠は、集めただけでは使いにくいものです。
時系列にして整理します。
日付
出来事
関係者
残っている資料
資料で分かること
不足している資料
次に確認すること
不貞、暴力、生活費、財産、子ども、別居など、テーマごとに分けるとさらに分かりやすくなります。
弁護士相談や調停では、「これだけ証拠があります」と並べるより、「この日にこういう出来事があり、この資料で確認できます」と説明する方が伝わります。
まとめ
証拠を取るときは、我慢と観察が必要です。
ただし、相手を泳がせることや、相手の私物を探ることが目的ではありません。
必要なのは、法律に触れない方法で、事実を確認できる資料を残すことです。
スマートフォン、鞄、車、衣類、会社への連絡などは、扱い方を間違えると、こちらが別の問題を抱えることがあります。
不貞、暴力、生活費、財産分与、養育費のどれを説明するための資料なのかを先に決め、証拠を時系列で整理します。
証拠集めに迷う場合は、無理に動く前に、弁護士などの専門家へ相談することが大切です。
