清算条項とは?離婚協議書に必ず入れるべきお金のトラブル防止策【長崎】

清算条項とは、離婚協議書や離婚公正証書に定めた内容のほかには、当事者間に債権債務がないことを確認する条項です。日本公証人連合会も、清算条項を「公正証書に記載した権利・義務関係のほかには、何らの債権債務がない旨を当事者双方が確認する条項」と説明しています。

簡単にいえば、「この書面に書いたこと以外は、今後お互いに請求しません」と確認する条項です。離婚後に金銭請求を蒸し返さないために入れることがあります。

ただし、清算条項は便利な条項である一方で、入れ方を誤ると、後から必要な請求ができなくなるおそれがあります。特に、財産分与、慰謝料、婚姻費用、立替金、年金分割などが残っている場合は注意が必要です。

目次

清算条項を入れる意味

離婚協議書や公正証書には、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、面会交流、不動産、住宅ローンなどを定めることがあります。清算条項は、これらの取り決めをした後に、当事者間の権利関係を一応区切るために入れます。

清算条項がない場合、離婚後に「ほかにも払うべきお金があった」「あの財産はまだ分けていない」といった主張が出ることがあります。清算条項を入れることで、離婚時に決めた内容を確定しやすくなります。

一方で、未整理の問題まで清算してしまうと、後から困ることがあります。清算条項は、最後に機械的に入れるものではありません。何を終わらせるのか、何を残すのかを確認してから入れる条項です。

2026年4月1日以降は財産分与との関係に注意する

2026年4月1日施行の民法改正により、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は、離婚後2年から5年に延長されました。ただし、2026年3月31日以前に離婚した夫婦については、従前どおり離婚後2年です。

この改正により、離婚後に財産分与を請求できる期間は長くなりました。しかし、離婚協議書や公正証書で清算条項を入れ、財産分与についても「これ以上請求しない」と合意している場合は、後から請求できるかが問題になります。

そのため、財産の全体像が確認できていない段階で、強い清算条項を入れるのは危険です。預貯金、不動産、保険、退職金、住宅ローン、借入金などを確認してから、清算する範囲を決める必要があります。

清算条項を入れてよい場面

清算条項を入れてよいのは、離婚時に整理すべきお金や権利関係を確認し、残すものがないと判断できる場合です。

たとえば、次のような場面です。

財産分与の対象財産を確認した
慰謝料の有無を確認した
婚姻費用の未払いを確認した
立替金や貸付金の有無を確認した
年金分割をするか確認した
不動産と住宅ローンの扱いを確認した
離婚後に残す約束を本文に書いた

これらを確認したうえで、書面に書いた内容以外には請求しないと合意するのであれば、清算条項を入れる意味があります。

清算条項を入れる前に確認すること

清算条項を入れる前には、「本当に終わらせてよいもの」と「まだ残すべきもの」を分ける必要があります。特に、次の項目は確認が必要です。

財産分与

財産分与をしないのか、一定額を支払って終わらせるのか、不動産や住宅ローンをどうするのかを確認します。

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分ける制度です。法務省は、財産分与について、婚姻中に取得又は維持した財産の額、各自の寄与、婚姻期間、生活水準、職業、収入などを考慮すると説明しています。

財産分与を十分に確認しないまま清算条項を入れると、後から財産が見つかったときに問題になります。

慰謝料

不貞、暴力、精神的な虐待などがあり、慰謝料を請求する可能性がある場合は、清算条項に注意が必要です。

慰謝料を支払って終わらせるのか、慰謝料は請求しないのか、まだ判断できないのかを分けて考えます。慰謝料の有無や金額で争いがある場合は、弁護士に相談する場面です。

婚姻費用

別居期間中の生活費である婚姻費用に未払いがある場合は、清算条項を入れる前に確認します。

「離婚後はもう関係ない」と思っていても、別居中の未払いが残っていることがあります。婚姻費用を支払って終わらせるのか、請求しないのかを明確にする必要があります。

年金分割

年金分割は、財産分与とは別の制度です。離婚協議書や公正証書で清算条項を入れても、年金分割の手続きまで終わったことにはなりません。

年金分割をする場合は、按分割合を定め、年金事務所での請求手続きを見通しておく必要があります。年金分割の請求期限は、2026年4月1日以降の離婚等については、原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。2026年3月31日以前の離婚等については、従前どおり2年以内です。

養育費

養育費は、清算条項で簡単に終わらせる項目として扱うべきではありません。養育費は、子の生活に関わるお金です。

2026年4月1日施行の民法改正では、養育費の支払確保に関する見直しが行われました。養育費の取決めがない場合にも、暫定的な養育費である法定養育費を請求できる制度が新設され、養育費の取決めに基づく支払確保の仕組みも見直されています。

そのため、清算条項を入れる場合でも、養育費は本文で別に定める必要があります。子の進学、病気、生活状況の変化により、後から協議が必要になることもあります。

清算条項の書き方

清算条項は、何も考えずに強く書けばよいものではありません。一般的には、離婚協議書や公正証書に定めた内容以外には、当事者間に債権債務がないことを確認する形にします。

たとえば、次のような書き方です。

本協議書に定めるもののほか、甲乙間には、名目のいかんを問わず、何らの債権債務がないことを相互に確認する

このような条項を入れると、財産分与、慰謝料、婚姻費用、立替金などについて、後から請求できるかに影響します。そのため、未整理の問題がある場合は、その部分を除外する必要があります。

留保条項が必要な場面

まだ確認が終わっていない項目がある場合は、清算条項を入れないか、留保条項を入れます。留保条項とは、「この項目については、まだ清算しない」と明記する条項です。

たとえば、次のような場面です。

不動産の査定が終わっていない
退職金見込額が確認できていない
保険の解約返戻金が分からない
住宅ローンの残高が確定していない
別居中の婚姻費用に未払いがある
年金分割の情報通知書を取得していない
相手名義の財産を確認できていない

このような場合に、すべてを清算する条項を入れると、後から争いになりやすくなります。

留保する場合は、次のように、残す項目をはっきり書きます。

ただし、年金分割に関する手続きについては、本条の清算対象に含めない

ただし、別居期間中の婚姻費用の未払分については、別途協議する

ただし、別紙財産目録に記載のない財産が判明した場合の取扱いについては、別途協議する

清算条項を入れない方がよい場面

次のような場合は、清算条項を入れる前に慎重な確認が必要です。

財産の全体像が分からない
相手の預貯金や保険が確認できていない
不動産や住宅ローンが残っている
退職金の扱いが決まっていない
慰謝料の有無で考えが分かれている
婚姻費用の未払いが残っている
年金分割をまだ確認していない
相手との間で強い対立がある

このような状態で清算条項を入れると、離婚後に「本当は請求したかった」「まだ終わっていないと思っていた」という問題が起きやすくなります。

清算条項は、相手を安心させるためだけに入れる条項ではありません。自分が残すべき権利まで消してしまわないために、内容を確認してから入れるものです。

離婚協議書や公正証書での注意点

清算条項は、離婚協議書や公正証書の最後に置かれることが多い条項です。しかし、最後に置かれるからといって、軽い条項ではありません。むしろ、書面全体の効力を締める重要な条項です。

清算条項を入れるときは、先に本文で決めるべきことをすべて書きます。養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、婚姻費用、不動産、住宅ローン、立替金などを確認し、残す項目があれば留保します。

相手との間で請求権の有無や金額に争いがある場合は、弁護士に相談する場面です。合意内容が固まっている場合は、その内容を離婚協議書や公正証書にして、何を終わらせ、何を残すのかを明確にしておくことが大切です。

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