財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚の際に分ける制度です。名義が夫だけ、妻だけになっていても、その財産が夫婦の協力によって作られたものであれば、財産分与の対象になることがあります。
財産分与は、まず夫婦の話し合いで決めます。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に財産分与を請求することができます。法務省も、財産分与を「夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度」と説明しています。
財産分与で中心になるのは、清算的財産分与です。これは、婚姻中に夫婦で築いた財産を、名義だけで判断せず、実質に応じて分ける考え方です。
2026年4月1日から請求期間は5年
2026年4月1日に施行された民法改正により、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は、離婚後2年から5年に延長されました。ただし、2026年3月31日以前に離婚した夫婦については、従前どおり離婚後2年です。
「5年あるから、後で考えればよい」という意味ではありません。通帳、保険、不動産、住宅ローン、退職金などの資料は、時間が経つほど確認しにくくなります。離婚の話し合いをする段階で、財産分与も一緒に整理しておく方が安全です。
財産分与で考慮されること
2026年4月1日施行の改正民法では、財産分与で考慮される事情が明確になりました。法務省の説明では、婚姻中に取得又は維持した財産の額、財産の取得又は維持への各自の寄与、婚姻期間、婚姻中の生活水準、協力及び扶助の状況、年齢、心身の状況、職業、収入などが挙げられています。
また、財産の取得又は維持への寄与の程度は、原則として夫婦対等、つまり2分の1ずつとされています。収入を得る仕事だけでなく、家事、育児、生活の支えも、夫婦の財産形成に関わるものとして考えられます。
ただし、すべての財産を必ず半分にするという意味ではありません。対象になる財産を確認し、その財産が婚姻中に夫婦の協力で作られたものかを整理する必要があります。
財産分与の対象になる財産
財産分与の対象になるのは、原則として、婚姻中に夫婦の協力によって取得し、又は維持した財産です。名義がどちらになっているかだけでは決まりません。
対象になりやすい財産は、次のようなものです。
預貯金
不動産
自動車
株式、投資信託などの金融資産
生命保険の解約返戻金
退職金又は退職金見込額
住宅ローン付き不動産
家財道具
財産分与では、プラスの財産だけでなく、住宅ローンなどの負債も確認します。自宅をどちらが使うのか、住宅ローンを誰が支払うのか、名義変更や売却が必要かによって、離婚後の生活に大きく影響します。
財産分与の対象になりにくい財産
夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産は、原則として財産分与の対象になりません。これを特有財産といいます。
対象になりにくい財産は、次のようなものです。
婚姻前から持っていた預貯金
婚姻前から所有していた不動産
婚姻中に相続で取得した財産
婚姻中に親などから贈与を受けた財産
特有財産を原資として取得した財産
ただし、婚姻中に夫婦で維持管理していた場合や、夫婦の生活費と混ざっている場合は、簡単に分けられないことがあります。特有財産と主張する場合は、婚姻前からの通帳、相続関係の資料、贈与の記録などを確認しておく必要があります。
金銭で分ける方法
財産分与で多いのは、金銭で支払う方法です。預貯金を分ける場合や、不動産を一方が取得して、もう一方に代償金を支払う場合に使われます。
一括払い
一括払いは、財産分与の金額を一度に支払う方法です。後の未払いリスクが少なく、離婚後の関係を早く整理しやすい方法です。
一方で、支払う側にまとまった資金がない場合は、現実的でないことがあります。その場合は、預貯金、不動産売却、退職金、借入れの可否などを確認する必要があります。
分割払い
分割払いは、財産分与の金額を決めたうえで、何回かに分けて支払う方法です。支払う側に一括払いの資金がない場合に使われます。
分割払いにする場合は、総額、毎月の支払額、支払日、支払期間、振込先を明確にします。支払いが遅れた場合の扱いも決めておく必要があります。離婚協議書や公正証書では、この部分をあいまいにしないことが重要です。
定期金払い
定期金払いは、一定期間、毎月一定額を支払う方法です。財産分与に扶養的な意味合いが含まれる場合に検討されることがあります。
ただし、定期金払いは、支払期間が長くなるほど未払いの不安が残ります。なぜその支払いが必要なのか、いつまで支払うのか、途中で事情が変わった場合にどうするのかを整理しておく必要があります。
不動産を分ける方法
不動産は、登記名義が夫婦の一方だけになっていても、婚姻中に夫婦の協力で取得又は維持したものであれば、財産分与の対象になることがあります。
不動産を分ける方法には、主に次のものがあります。
売却して代金を分ける
一方が取得し、もう一方に代償金を支払う
一方が住み続け、住宅ローンの支払方法を決める
共有のままにする
共有のまま残す方法は、離婚後も関係が続きやすく、後で売却や管理の問題が出ることがあります。できる限り、誰が所有するのか、誰が住むのか、住宅ローンを誰が払うのかを具体的に決めておく必要があります。
不動産を財産分与で移転する場合は、登記手続きが必要になります。登記は司法書士の業務です。不動産取得税、譲渡所得税、贈与税などが問題になることもあるため、必要に応じて税理士にも確認します。
財産分与で確認しておく資料
財産分与では、先に財産の一覧を作ることが重要です。金額の話を先に始めると、何を分けるのかがあいまいなまま話し合いが進んでしまいます。
確認しておく資料は、次のとおりです。
預貯金通帳
残高証明書
保険証券
解約返戻金の資料
不動産の固定資産税通知書
登記事項証明書
住宅ローン残高証明書
証券口座の残高資料
退職金見込額の資料
自動車の査定資料
借入金やカードローンの資料
家庭裁判所の手続きでは、財産分与の対象となる財産の種類や金額を明らかにする必要があります。2026年4月1日施行の改正では、家庭裁判所が当事者に対して財産情報の開示を命じることができる仕組みも設けられています。
離婚協議書や公正証書に残すべきこと
財産分与を決めるときは、金額だけでなく、実行方法まで書面に残す必要があります。特に、分割払い、不動産、住宅ローン、退職金が関係する場合は、口約束では後で確認できません。
書面に残す主な項目は、次のとおりです。
財産分与の総額
支払方法
支払期限
分割払いの回数と金額
振込先
不動産を取得する人
住宅ローンの支払方法
登記手続きの協力義務
必要書類の受渡し
支払いが遅れた場合の扱い
相手との間で金額や財産の範囲を争っている場合は、弁護士に相談する場面です。話し合いで条件がまとまる見込みがある場合は、離婚協議書や公正証書にして、後から確認できる形に整えておくことが大切です。
