離婚協議書は離婚後のお金と子どもの約束を残す書面
離婚協議書とは、協議離婚にあたり、夫婦で決めた内容を残す書面です。養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、親子交流などを、後から確認できる形にします。
2026年4月1日から、父母の離婚後の親権、養育費、親子交流、財産分与などのルールが見直されています。協議離婚では、父母が話し合いにより、離婚後の親権者を父母双方にするか、父母の一方にするかを決めることができます。話し合いで決まらない場合などは、家庭裁判所が子どもの利益を考えて定めます。
このサンプルは、父母の一方を親権者及び監護者とする場合の基本型です。父母双方を親権者とする場合は、監護者、子どもの居所、日常の監護、学校や医療などの重要事項について、別に条項を整える必要があります。共同親権になった場合でも、具体的な監護のあり方、親子交流、養育費は、子どもの利益を最も優先して別に定めるものとされています。
離婚協議書サンプル
離婚協議書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙の離婚に関する事項について、次のとおり合意した。
第1条(離婚)
甲及び乙は、協議離婚することに合意する。
2 甲及び乙は、離婚届に必要な署名を行い、乙は、本協議成立後〇日以内に、離婚届を市区町村役場へ提出する。
第2条(親権者及び監護者)
甲及び乙は、甲乙間の子である長男〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日生)及び長女〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日生。以下「子ら」という。)の親権者を、いずれも母である乙と定める。
2 乙は、子らの監護者として、子らを監護し、教育する。
第3条(養育費)
甲は、乙に対し、子らの養育費として、令和〇年〇月から、子らがそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで、子1人につき月額金〇〇〇〇円を支払う。
2 甲は、前項の養育費を、毎月末日限り、乙の指定する金融機関口座へ振り込んで支払う。
3 振込手数料は、甲の負担とする。
4 甲及び乙は、子らの進学、病気、事故、甲又は乙の収入の大きな変動その他事情の変更があった場合には、子らの利益を最も優先して、養育費の額、支払期間その他必要な事項について誠実に協議する。
第4条(親子交流)
乙は、甲が子らと月〇回程度、親子交流を行うことを認める。
2 親子交流の具体的な日時、場所、方法、連絡方法その他必要な事項は、甲及び乙が、子らの年齢、生活状況、心身の状態及び意思を踏まえ、子らの利益を最も優先して協議のうえ定める。
3 甲及び乙は、親子交流の実施にあたり、子らの生活、学校行事、体調その他の事情に配慮する。
第5条(財産分与)
甲は、乙に対し、財産分与として金〇〇〇〇円を支払う義務があることを認める。
2 甲は、前項の金員を、次のとおり、乙の指定する金融機関口座へ振り込んで支払う。
(1)令和〇年〇月〇日限り 金〇〇〇〇円
(2)令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、毎月末日限り 金〇〇〇〇円
3 振込手数料は、甲の負担とする。
4 甲及び乙は、本条に定める財産分与について、預貯金、不動産、保険、退職金、住宅ローンその他婚姻中に取得又は維持した財産及び負債を確認したうえで合意したことを確認する。
第6条(慰謝料)
甲は、乙に対し、慰謝料として金〇〇〇〇円を支払う義務があることを認める。
2 甲は、前項の金員を、令和〇年〇月〇日限り、乙の指定する金融機関口座へ振り込んで支払う。
3 振込手数料は、甲の負担とする。
第7条(年金分割)
甲及び乙は、別紙「年金分割のための情報通知書」記載の情報に係る年金分割について、請求すべき按分割合を0.5と定める。
2 甲及び乙は、年金分割の請求手続に必要な書類の作成、提出、年金事務所等での手続その他必要な行為に協力する。
第8条(住所等の変更通知)
甲及び乙は、住所、電話番号、勤務先、金融機関口座その他本協議書の履行に必要な事項に変更があった場合には、速やかに相手方へ通知する。
第9条(公正証書作成への協力)
甲及び乙は、相手方から求めがあった場合、本協議書に定める金銭の支払義務について、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成することに協力する。
2 公正証書作成に要する公証役場手数料その他の実費は、甲乙協議のうえ定める。
第10条(清算条項)
甲及び乙は、本協議書に定めるもののほか、甲乙間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。
2 ただし、子らの養育費、親子交流、年金分割の請求手続、本協議書に定める支払義務及び本協議書の履行に必要な事項については、前項の清算対象に含まれない。
第11条(協議事項)
本協議書に定めのない事項又は本協議書の解釈について疑義が生じた場合には、甲及び乙は、子らの利益を最も優先し、誠実に協議して解決する。
本協議の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自が署名押印のうえ、各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
甲
住所
氏名 印
乙
住所
氏名 印
サンプルを使う前に確認すること
親権者と監護者
2026年4月1日以降の離婚では、父母の一方を親権者とする場合と、父母双方を親権者とする場合があります。どちらかが常に原則というものではなく、子どもの利益を考えて決める必要があります。
このサンプルは、母を親権者及び監護者とする形です。父を親権者とする場合は、条文中の甲乙を入れ替えます。共同親権にする場合は、このサンプルをそのまま使わず、監護者、居所、日常の監護、重要事項の決め方を別に整理します。
養育費
養育費の終期は、18歳、20歳、大学等卒業時など、子どもの状況に応じて決めます。成年年齢が18歳になっていても、養育費が必ず18歳で終わるわけではありません。法務省のQ&Aでも、父母が生活保持義務を負う「子」の範囲は未成年に限定されておらず、大学生である成年の子について従前の解釈に直ちに影響を与えるものではないとされています。
2026年4月1日からは、文書で養育費の取り決めがあれば、養育費債権に先取特権が認められ、一定の範囲で差押えの申立てが可能になる制度も始まっています。ただし、養育費の取り決めをきちんと書面に残すことが前提です。
財産分与
財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際に分ける制度です。2026年4月1日から、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は、離婚後2年から5年に延長されています。
ただし、離婚協議書に清算条項を入れる場合は注意が必要です。財産分与について十分に確認しないまま「ほかに請求しない」と書くと、後から預貯金、保険、不動産、退職金などが見つかったときに問題になります。
年金分割
年金分割は、離婚協議書に書いただけでは完了しません。年金分割のための情報通知書を確認し、按分割合を定めたうえで、年金事務所等で請求手続を行う必要があります。
年金分割の請求期限は、2026年4月1日以降に離婚等をした場合は、原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。2026年4月1日前に離婚等をした場合は、従前どおり2年以内です。
公正証書
養育費、財産分与、慰謝料などの支払いを確実にしたい場合は、離婚協議書だけで終わらせず、公正証書にすることがあります。特に分割払いがある場合は、支払額、支払日、支払期間、振込先、遅れた場合の扱いを明確にしておく必要があります。
公正証書にする場合は、金銭の支払義務について、強制執行認諾文言を入れるかを確認します。相手が支払わない場合に備えるためです。
清算条項
清算条項は、離婚協議書に書いた内容以外には、当事者間に債権債務がないことを確認する条項です。便利な条項ですが、入れ方を誤ると、後から必要な請求ができなくなるおそれがあります。
養育費、親子交流、年金分割の請求手続、分割払いの支払義務など、離婚後も残るものは清算条項から除外しておく必要があります。清算条項は、最後に機械的に入れる条項ではありません。何を終わらせ、何を残すのかを確認してから入れる条項です。
