離婚の話を、そのまま話せる人は少ない。何があったかは、少しずつ形を変えて外に出ていきます。相手への配慮もあります。子どものこともあります。世間にどう見られるかも、どこかで影響します。
だから「なぜ離婚するのか」という問いへの答えは、そのままの事実ではありません。本当のことは、もっと地味で、もっと長くて、説明するほど輪郭が崩れていくものです。
夫婦の間で積み上がった時間は、一言では切り取れません。怒鳴り合いがあったわけでもない。暴力があったわけでもない。ただ、終わった。それでも理由を求められると、言葉が途中で止まります。
言葉にできないことは、そのまま動けなさになります。整理できないまま話し合いに入ると、何も決まりません。何も決まらないまま、時間だけが流れていきます。
離婚が前に進まないのは、理由がなければ進めないと思い込んでいることかもしれません。
離婚の理由は、整理できることもあれば、そうでないこともあります。すべてを説明しなくても、次に進むことはできます。条件を並べて、順番を決めて、形にする。それだけで、動きは生まれます。
名もなきものは漂います。
名を持つことで鎮まります。
書が、それを綴じる。
