離婚を考えるときは、感情だけで動かず、先に生活とお金を整理しておくことが大切です。
離婚後、子どもがいない方は、自分の生活を自分で支える必要があります。子どもを育てる方は、自分の生活に加えて、子どもの生活、学校、住まい、養育費、親子交流のことも考える必要があります。
離婚を決めて、いきなり相手に伝えるのは危険です。「離婚してください」と言った後も、同じ家で生活を続けられるとは限りません。
先に確認するべきことは、お金、住まい、仕事、氏、戸籍、財産分与、慰謝料、子どものことです。
離婚前にお金を確認する
まず確認するのは、お金です。
離婚には、離婚前に必要なお金と、離婚後に必要なお金があります。
離婚前に必要なお金には、相談料、書類作成費用、公正証書の費用、裁判所の手続費用、弁護士費用、引っ越し費用などがあります。
離婚後に必要なお金には、家賃、生活費、子どもの費用、保険料、車の維持費、家電や家具の購入費などがあります。
離婚後の生活を始めるには、まとまったお金が必要です。目安として100万円を準備できると安心です。ただし、難しい場合でも、できる範囲で自分名義の資金を作っておくことが大切です。
離婚前に準備するお金
離婚前には、次のことを確認します。
自分名義の銀行口座を持つ。
自分名義の口座に資金を作る。
結婚前の預貯金や相続で受け取ったお金は、家計と分けておく。
自分の収入からも貯蓄をする。
生命保険の受取人がどうなっているかを確認する。
夫婦の共有財産と、自分だけの財産を分けて確認する。
結婚前からの預貯金、親からの相続財産、贈与された財産は、原則として夫婦の共有財産とは別に扱われます。ただし、家計と混ざると後で説明しにくくなることがあります。
通帳、保険証券、住宅ローン、車、株式、投資信託、退職金見込みなど、資料を整理しておくことが重要です。
住まいをどうするか
離婚後にどこで暮らすかは、離婚条件を決める前に考える必要があります。
住まいが決まらないと、毎月の生活費が見えません。家賃、引っ越し費用、敷金、礼金、家具、家電、通勤、子どもの学校や保育園にも影響します。
考える選択肢は、主に次の3つです。
- 婚姻中の住居に住み続ける。
- 実家に戻る。
- 新しい住居を借りる。
持ち家に住み続ける場合は、不動産の名義、住宅ローン、固定資産税、修繕費、財産分与での評価を確認します。
賃貸住宅に住む場合は、契約者を誰にするか、保証人、初期費用、敷金の返還先を確認します。
実家に戻る場合も、生活費をどう負担するか、いつまで住むのか、子どもの学校や通学に無理がないかを確認します。
仕事をどうするか
離婚後の生活は、収入の見通しがないと安定しません。
今の仕事を続けるのか。
新しく仕事を探すのか。
離婚前に職業訓練や資格取得を考えるのか。
子どもの送迎と仕事の時間が合うのか。
これらを先に確認します。
特に専業主婦だった方、短時間勤務だった方、子どもを引き取る方は、離婚後の収入を現実的に見積もる必要があります。
養育費や慰謝料は、決めたとおりに必ず支払われるとは限りません。相手からの支払いだけに頼らない生活設計が必要です。
離婚後の氏をどうするか
結婚で氏を変えた方は、離婚後にどの氏を名乗るかを決める必要があります。
離婚すると、結婚で氏を変えた方は、原則として婚姻前の氏に戻ります。
婚姻中の氏をそのまま使いたい場合は、離婚の日から3か月以内に、市区町村役場へ「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。これは一般に、婚氏続称の届出と呼ばれます。
3か月以内であれば、相手の許可は不要です。理由を説明する必要もありません。
3か月を過ぎた後に氏を変更する場合は、家庭裁判所で氏の変更許可を受ける必要があります。
子どもがいる場合は、子どもの学校、友人関係、戸籍、生活上の呼び名にも関係します。氏は、離婚前に慎重に考えておいた方がよいです。
戸籍をどうするか
夫婦は、結婚の際にどちらかの氏を選びます。選んだ氏の側が戸籍の筆頭者になります。
離婚すると、筆頭者でない側は、原則としてその戸籍から除かれます。
その後は、結婚前の戸籍に戻るか、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作るかを選びます。
ただし、子どもがいる場合は注意が必要です。親が離婚しても、子どもは当然には親権者の戸籍へ移りません。子どもは、原則として婚姻中の戸籍に残ります。
子どもを自分の戸籍に入れるには、家庭裁判所で子の氏の変更許可を受け、その後に市区町村役場へ入籍届を出す必要があります。
子どもがいる方は、離婚後の氏と戸籍をセットで考えてください。
財産分与をどうするか
財産分与は、婚姻中に夫婦で築いた財産を分ける手続きです。
対象になるのは、預貯金、不動産、車、保険、株式、投資信託、退職金見込み、家財道具などです。
名義が夫または妻の一方だけになっていても、婚姻中に夫婦で築いた財産であれば、財産分与の対象になることがあります。
一方で、結婚前からの預貯金、親から相続した財産、親から贈与された財産などは、原則として特有財産として扱われます。
財産分与は、離婚理由とは別に考えます。どちらが悪いかではなく、婚姻中に築いた財産をどう分けるかが中心です。
財産分与の割合
財産分与では、夫婦がどれくらい財産形成に貢献したかが見られます。
現在の実務では、収入の多い少ないだけで決まるわけではありません。家事、育児、家庭の維持も財産形成への貢献として考えます。
そのため、原則として2分の1ずつを基本に考えることが多いです。
ただし、特別な事情がある場合は、具体的な事情に応じて変わります。
財産分与の請求期間
財産分与は、離婚後でも請求できます。
ただし、請求できる期間には制限があります。
2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与の請求期間は、原則として離婚後5年です。
一方、2026年3月31日以前に離婚した場合は、従前どおり離婚後2年です。
この点は、古い記事では「離婚後2年」とだけ書かれていることが多いため、現在は注意が必要です。
不動産を分けるときの注意
持ち家を財産分与する場合は、不動産の名義変更が問題になります。
土地や建物を現物で分ける場合、所有権移転登記が必要です。登記は司法書士の業務です。
住宅ローンが残っている場合は、さらに注意が必要です。
誰が住み続けるのか。
誰がローンを払うのか。
金融機関が名義変更を認めるのか。
売却するのか。
財産分与としてどう評価するのか。
これらを確認せずに離婚協議書を作ると、後で困ることがあります。
賃貸住宅の場合も、賃貸借契約の名義、敷金の返還先、退去費用の負担を確認します。
慰謝料をどう考えるか
慰謝料は、離婚すれば必ず発生するものではありません。
相手の不貞、暴力、悪意の遺棄などにより精神的苦痛を受けた場合に問題になります。
慰謝料の金額は、事案によって異なります。婚姻期間、子どもの有無、相手の行為の内容、双方の収入や財産、財産分与の有無などが考慮されます。
「相場はいくら」と一律に決めることはできません。
話し合いで慰謝料を決める場合は、金額、支払時期、一括払いか分割払いか、支払いが遅れた場合の扱いを決めます。
分割払いにする場合は、公正証書にしておくことを検討します。
慰謝料の支払方法
慰謝料は、金銭で支払うことが多いです。
一括払いができるなら、一括払いの方が後の不払いリスクは低くなります。
分割払いにする場合は、いつ、いくら、どの口座へ支払うのかを明確にします。
支払いが遅れた場合、残額を一括で支払うのか、遅延損害金をどうするのかも決めておく必要があります。
公正証書にしておくと、強制執行認諾文言を入れることで、一定の場合に裁判を経ずに強制執行へ進めることができます。
子どもがいる場合に決めること
子どもがいる場合は、離婚条件が増えます。
主に決めることは、次の内容です。
親権
監護の分担
養育費
親子交流
子どもの氏
子どもの戸籍
学校や保育園
医療費、学費、習い事の負担
離婚後の子の養育に関する民法等改正により、親権、監護、養育費、親子交流などのルールが見直されています。父母の離婚後の子の養育に関する改正法は、2026年4月1日に施行されています。
親権と監護について
古い記事では、「離婚すると父母のどちらか一方が親権者になる」と説明しているものがあります。
しかし、現在は離婚後の親権について、父母の一方を親権者とする場合だけでなく、父母双方を親権者とすることもあり得ます。
ただし、共同親権にするかどうかは、子どもの利益を中心に考える必要があります。
父母の対立が強い場合、DVや虐待がある場合、子どもに悪影響がある場合は、慎重な判断が必要です。
親権は、子どものための制度です。父母の権利争いとして考えるのではなく、子どもの生活、安心、安全、成長にとって何がよいかを基準に考えます。
親権と監護者
親権には、子どもの生活や教育に関する権限と、子どもの財産管理に関する権限があります。
子どもと日常的に暮らし、世話や教育を行う人を、監護者といいます。
親権者と監護者が同じ場合もあります。
別に定める場合もあります。
どちらが親権者になるかだけでなく、実際に誰が子どもと暮らすのか、学校、医療、習い事、親子交流をどうするのかを整理する必要があります。
養育費について
養育費は、子どもの生活、教育、医療、成長のために必要なお金です。
子どもと一緒に暮らしていない親も、子どもを養う責任があります。
養育費を決めるときは、父母の収入、子どもの人数、子どもの年齢などをもとに考えます。家庭裁判所では、養育費算定表が参考にされています。
養育費は、口約束にしない方がよいです。
毎月いくら支払うのか。
いつまで支払うのか。
どの口座へ振り込むのか。
進学費用や医療費をどうするのか。
支払いが遅れた場合にどうするのか。
これらを離婚協議書や公正証書に残します。
親子交流について
古い記事では「面接交渉」という言葉が使われていることがあります。
現在は、「面会交流」または「親子交流」という言葉が使われます。改正法では、親子交流という表現が使われています。
親子交流は、離れて暮らす親と子どもが会ったり、連絡を取ったりすることです。
親子交流は、親のためだけのものではありません。子どもの利益を中心に考えます。
頻度、時間、場所、受け渡し方法、連絡方法、学校行事への関わり、誕生日や長期休暇の扱いなどを決めます。
ただし、DV、虐待、強い対立、子どもの拒否、連れ去りのおそれなどがある場合は、安全を優先する必要があります。
親子交流で決めること
親子交流については、次のことを確認します。
会う頻度
会う時間
宿泊の有無
場所
日時の決め方
受け渡し方法
電話やオンラインでの交流
メールやメッセージのやり取り
誕生日や行事の扱い
学校行事への参加
子どもの意思
変更が必要になった場合の方法
連絡方法
親子交流は、一度決めれば終わりではありません。子どもの年齢、学校、体調、生活環境によって見直しが必要になることがあります。
子どもの氏と戸籍
両親が離婚しても、子どもの氏と戸籍は当然には変わりません。
親権者が母であっても、子どもは婚姻中の戸籍に残ることがあります。
子どもを自分の戸籍に入れたい場合は、家庭裁判所で子の氏の変更許可を受け、その後に市区町村役場へ入籍届を出します。
そのため、子どもがいる方は、自分の氏、子どもの氏、自分の戸籍、子どもの戸籍を分けて考える必要があります。
相手に請求するお金を整理する
離婚前には、相手に請求するお金を整理します。
養育費
財産分与
慰謝料
年金分割
婚姻費用
解決金
引っ越し費用
学費や医療費
住居に関係する費用
これらを一つに混ぜると、話し合いが分かりにくくなります。
養育費は子どものためのお金です。
財産分与は夫婦で築いた財産の清算です。
慰謝料は相手の有責行為による精神的苦痛に対するお金です。
年金分割は婚姻期間中の厚生年金記録を分ける手続きです。
それぞれ性質が違うため、分けて整理する必要があります。
控えておく資料
離婚条件を決める前に、資料を集めます。
預貯金の通帳や取引明細
相手の給与振込口座
源泉徴収票
給与明細
確定申告書
生命保険証券
年金番号や年金定期便
住宅ローンの残高
不動産の登記事項証明書
固定資産税評価証明書
車検証
株式や投資信託の資料
借入金の資料
家計の支出が分かる資料
これらは、財産分与、養育費、婚姻費用、年金分割を考えるときに必要になります。
証拠を集めるときの注意
浮気、暴力、借金、ギャンブルなどが問題になる場合は、証拠が重要になることがあります。
ただし、違法な方法で証拠を集めてはいけません。
相手のスマートフォンを無断で開く。
相手のメールやSNSに勝手にログインする。
GPSを無断で取り付ける。
盗聴する。
相手の勤務先に不用意に連絡する。
このような行為は、かえって問題を大きくすることがあります。
証拠が必要な場合は、弁護士に相談してください。
離婚協議書や公正証書に残すこと
離婚条件が決まったら、口約束で終わらせないことが大切です。
離婚協議書や公正証書には、次の内容を入れることがあります。
離婚すること
親権
監護の分担
養育費
親子交流
財産分与
慰謝料
年金分割
住まい
引っ越し費用
家財道具
住宅ローン
清算条項
通知義務
支払いが遅れた場合の扱い
離婚後に揉めにくくするには、誰が、いつ、いくら、どのように支払うのかを明確にします。
公正証書にする意味
養育費、慰謝料、財産分与などを分割で支払う場合は、公正証書を検討します。
公正証書に強制執行認諾文言を入れておくと、支払いが滞った場合に、一定の条件のもとで強制執行へ進めることがあります。
ただし、公正証書にすればすべて安心というわけではありません。
相手に収入や財産がない場合は、回収が難しいことがあります。
勤務先が分からない場合も、手続きが難しくなることがあります。
内容が曖昧だと、後で使いにくくなります。
そのため、公正証書にする前に、内容を整理しておく必要があります。
離婚前に一番大切なこと
離婚前に一番大切なのは、感情で決めないことです。
離婚するかどうか。
どこで暮らすか。
子どもをどう育てるか。
いくら必要か。
何を相手に請求するか。
何を書面に残すか。
これらを分けて整理する必要があります。
離婚は、届出を出せば終わりではありません。離婚後の生活が始まります。
離婚後に生活できる形を作ってから、離婚条件を決めることが大切です。
