有責配偶者からの離婚請求|浮気やDVをした側からの要求は通るか【長崎】

有責配偶者とは、婚姻関係が破綻したことについて、主な責任がある配偶者のことです。

典型例は、不貞行為によって夫婦関係を壊した配偶者です。暴力、悪意の遺棄、長期間の家庭放置なども、事案によっては有責性が問題になります。

ただし、「夫婦関係が悪くなった原因がある」というだけで、直ちに有責配偶者と決まるわけではありません。裁判では、夫婦関係がいつ、どのように悪化し、破綻に至った主な原因がどちらにあるのかを、具体的な事情から判断します。

目次

現在の民法770条

裁判で離婚を求める場合は、民法770条の離婚原因が問題になります。

現在の民法770条1項では、裁判上の離婚原因として、次の4つが定められています。2026年4月1日施行の改正により、旧4号の「強度の精神病」は削除され、旧5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が4号に繰り上がっています。(e-Gov 法令検索)

配偶者に不貞な行為があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

有責配偶者からの離婚請求では、多くの場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかが問題になります。

たとえば、不貞行為をした側が、「夫婦関係はすでに戻らない状態になっている」として離婚を求める場合です。

有責配偶者からの離婚請求は簡単には認められない

夫婦関係が破綻している場合でも、その原因を作った側からの離婚請求が当然に認められるわけではありません。

たとえば、不貞をした夫が家を出て、相手女性と暮らし、その後に妻へ離婚を求める場合を考えます。

このような請求を簡単に認めると、不貞をした側が自分で家庭を壊し、その結果を理由に離婚を求めることになります。相手方の配偶者から見れば、あまりに一方的です。

そのため、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求について、通常の離婚請求より慎重に判断します。

最高裁昭和62年9月2日判決の基準

有責配偶者からの離婚請求について、重要な判例が最高裁昭和62年9月2日大法廷判決です。

この判決は、有責配偶者からの離婚請求であっても、請求者が有責配偶者であるという理由だけで、常に許されないとはいえないと判断しました。

ただし、離婚が認められるには、次の事情が重く見られます。

夫婦の別居が、年齢や同居期間と比べて相当の長期間に及んでいること

夫婦の間に未成熟の子がいないこと

離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれないこと

この3つは、単なるチェックリストではありません。

裁判所は、別居期間、同居期間、子どもの有無、相手方の生活状況、経済的補償、破綻に至る経緯などを総合して判断します。

別居期間は何年ならよいとは決まっていない

有責配偶者からの離婚請求でよく問題になるのが、別居期間です。

しかし、「別居5年なら認められる」「8年なら必ず認められる」という決まりはありません。

最高裁昭和62年9月2日判決の事案では、別居期間は約36年に及んでいました。現在でも、別居期間だけで機械的に決まるわけではありません。

同居期間が長いか。
別居期間がどの程度か。
未成熟の子がいるか。
相手方が離婚後に生活できるか。
離婚に向けた経済的手当がされているか。
不貞や暴力などの責任がどの程度重いか。

これらを見て、離婚を認めることが信義則に反しないかを判断します。

未成熟子がいる場合

未成熟子とは、経済的・社会的にまだ独立していない子を指します。

義務教育が終わっているかだけで決まるものではありません。高校生、大学生、専門学校生などでも、父母の扶養を必要としている場合は未成熟子として問題になります。

未成熟子がいる場合、有責配偶者からの離婚請求は認められにくくなります。

特に、離婚によって子どもの生活費、住まい、進学、養育環境が不安定になる場合は、慎重に判断されます。

相手方が過酷な状態に置かれないか

有責配偶者からの離婚請求では、相手方配偶者が離婚によって過酷な状態に置かれないかが重要です。

たとえば、次のような事情が問題になります。

相手方に十分な収入があるか
住まいを確保できるか
病気や障害があるか
高齢で再就職が難しいか
婚姻期間が長いか
子どもの養育を担っているか
財産分与や慰謝料による手当があるか
年金分割や住まいの処理がされているか

不貞をした側が「もう夫婦関係は終わっている」と言うだけでは足りません。

相手方の生活をどう手当するのかが、離婚の可否や条件に大きく関わります。

有責主義から破綻主義へ

以前は、婚姻関係を壊した責任のある配偶者からの離婚請求は、原則として認められないという考え方が強くありました。

これを有責主義と呼ぶことがあります。

一方で、夫婦関係がすでに回復できない状態になっているなら、責任の有無だけで婚姻を続けさせることが現実的ではない場合もあります。

このような考え方を破綻主義と呼びます。

現在の判例は、完全にどちらか一方だけで考えているわけではありません。

婚姻関係が本当に破綻しているかを見ます。
そのうえで、請求者が有責配偶者である事情を重く見ます。
さらに、相手方や子どもが過酷な状態に置かれないかを見ます。

つまり、破綻していれば必ず離婚できるわけではありません。

有責配偶者からの離婚請求では、破綻の有無と、請求を認めることが公平かどうかの両方が見られます。

離婚条件が重要になる

有責配偶者から離婚を求める場合は、離婚そのものだけでなく、離婚条件が重要になります。

特に次の内容を整理する必要があります。

慰謝料
財産分与
婚姻費用
養育費
親権・監護
親子交流
年金分割
住まい
住宅ローン
清算条項

相手方の生活をどう守るのか。
子どもの生活をどう支えるのか。
離婚後の住まいをどうするのか。
お金の支払いをどのように確保するのか。

ここを示さずに離婚だけを求めても、相手方が応じないのは自然です。

協議離婚での注意点

有責配偶者から離婚を求める場合でも、夫婦が合意すれば協議離婚はできます。

ただし、相手方が納得していないのに、離婚届への署名だけを急がせることは避けるべきです。

慰謝料、財産分与、養育費、年金分割、住まい、清算条項を決めないまま離婚届を出すと、後で大きな問題になります。

特に、支払いが長く続く養育費や分割払いの慰謝料、財産分与については、公正証書にするかを検討します。

争いがある場合

有責配偶者からの離婚請求は、争いになりやすい分野です。

離婚原因に争いがある。
不貞行為を否認している。
別居の原因に争いがある。
相手方が離婚を拒否している。
慰謝料や財産分与の金額で争いがある。
子どもの親権・監護で争いがある。

このような場合は、弁護士に相談する場面です。

行政書士は、夫婦間で合意した離婚条件を、離婚協議書や公正証書案に整理することはできます。

一方で、離婚請求、慰謝料請求、調停、裁判、代理交渉は扱えません。

まとめ

有責配偶者とは、婚姻関係が破綻したことについて主な責任がある配偶者をいいます。

不貞行為をした側、暴力をした側、悪意の遺棄をした側などが問題になります。

有責配偶者からの離婚請求は、簡単には認められません。

ただし、最高裁昭和62年9月2日判決以降、有責配偶者からの請求であるという理由だけで、常に離婚が否定されるわけではなくなっています。

別居が相当長期間に及んでいるか。
未成熟子がいないか。
相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれないか。

これらの事情を中心に、裁判所は総合的に判断します。

有責配偶者から離婚を求める場合は、「離婚したい」という意思だけでは足りません。

相手方の生活、子どもの生活、慰謝料、財産分与、養育費、年金分割、住まいを具体的に整理する必要があります。

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