離婚では、感情の整理だけでなく、法律上の整理も必要になります。
協議離婚であれば、夫婦が合意し、離婚届が受理されることで離婚が成立します。一方で、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や裁判で、親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割などを整理することになります。
令和8年4月1日施行の民法等改正により、離婚後の親権、養育費、親子交流、財産分与などのルールが大きく見直されています。離婚の記事では、以前の条文や言い回しをそのまま使わず、現在の法律に合わせて整理する必要があります。(法務省)
離婚で関係する法律
離婚で主に関係するのは、民法です。
民法は、夫婦、親子、財産、契約、不法行為など、個人と個人の関係を定める基本的な法律です。離婚では、協議離婚、裁判離婚、親権、養育費、財産分与、慰謝料などを考えるときに民法が関係します。
離婚届の手続には、戸籍法も関係します。
調停や審判、裁判になった場合は、家事事件手続法、民事訴訟法なども関係します。
離婚は、「夫婦が別れる」という一つの出来事に見えます。ただし法律上は、身分関係、子どもの養育、お金、住まい、将来の年金まで整理する手続です。
協議離婚と裁判離婚
離婚には、夫婦の話し合いで決める協議離婚があります。
協議離婚は、夫婦が離婚に合意し、離婚届が市区町村役場で受理されることで成立します。
一方で、夫婦の一方が離婚に応じない場合や、親権、養育費、財産分与などで合意できない場合は、家庭裁判所の調停を利用することがあります。
調停でもまとまらない場合には、裁判で離婚を求めることがあります。
裁判で離婚を求める場合は、民法770条の離婚原因が問題になります。
裁判上の離婚原因
令和8年4月1日以降の民法770条では、裁判上の離婚原因は次のとおりです。(e-Gov法令検索・民法)
配偶者に不貞な行為があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
以前は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という離婚原因がありました。しかし、令和8年4月1日施行の改正により、この規定は削除されています。現在は、病気や障害がある場合でも、それだけを独立の離婚原因として扱うのではなく、夫婦関係全体の事情、療養、生活の手当、婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかの問題として考えることになります。(法務省)
不法行為と慰謝料
離婚で慰謝料が問題になる場合、民法709条と710条が関係します。
民法709条は、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。民法710条は、財産以外の損害についても賠償責任があることを定めています。(e-Gov法令検索・民法)
離婚で慰謝料が問題になる主な場面は、次のような場合です。
不貞行為
暴力
悪意の遺棄
強い暴言や侮辱
生活費を渡さないこと
婚姻関係を壊すような重大な行為
ただし、離婚するからといって、必ず慰謝料が発生するわけではありません。
性格の不一致、価値観の違い、生活感覚の違いなど、どちらか一方の違法な行為とは言いにくい場合は、慰謝料ではなく、財産分与、養育費、年金分割、住まいの整理を中心に考えます。
不貞行為と不法行為
不貞行為は、裁判上の離婚原因の一つです。
また、不貞行為は、他方配偶者に対する不法行為として、慰謝料請求の対象になることがあります。
不貞相手に対する慰謝料請求では、単に交際していたというだけでは足りません。
不貞行為があったか
相手が既婚者であることを知っていたか
または知ることができたか
不貞関係が始まった時点で夫婦関係が破綻していなかったか
損害との関係があるか
このような点が問題になります。
最高裁平成8年3月26日判決は、夫婦の婚姻関係がその当時すでに破綻していた場合には、特段の事情がない限り、不貞相手は他方配偶者に対して不法行為責任を負わないと判断しています。婚姻関係がすでに破綻している場合には、法律上保護される婚姻共同生活の平和が残っているとはいえないからです。
不貞相手への離婚慰謝料請求
不貞相手に対する請求では、不貞行為そのものの慰謝料と、離婚したことによる慰謝料を分けて考える必要があります。
最高裁平成31年2月19日判決は、不貞相手が単に夫婦の一方と不貞行為をしただけでは、当然に「離婚させたこと」についての慰謝料責任まで負うわけではないと判断しています。離婚慰謝料まで認められるのは、不貞相手が夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当に干渉したなど、特段の事情がある場合に限られます。
このため、不貞相手に請求する場合は、次の区別が必要です。
不貞行為そのものによる慰謝料
離婚に至ったことによる慰謝料
同じ「慰謝料」という言葉でも、請求の根拠が違います。
子どもから不貞相手への慰謝料請求
親の不貞行為によって、子どもが傷つくことはあります。
しかし、子どもが不貞相手に対して当然に慰謝料請求できるわけではありません。
最高裁昭和54年3月30日判決は、父が不貞相手と同棲するに至り、子どもが父から愛情を注がれ、監護、教育を受けることができなくなった場合でも、不貞相手が害意をもって父子の関係を積極的に妨げたなどの特段の事情がない限り、子どもに対する不法行為責任は認められないと判断しています。
不貞行為は、夫婦の問題として慰謝料請求が問題になります。
子どもに悪影響が出ている場合は、不貞相手への請求よりも、親権、監護、養育費、親子交流、生活環境の確保を優先して考える必要があります。
財産分与
財産分与は、離婚にあたり、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を分ける制度です。
慰謝料とは性質が違います。
慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償です。
財産分与は、夫婦の共同生活の中で形成された財産を清算する手続です。
令和8年4月1日施行の改正により、家庭裁判所に財産分与を求めることができる期間は、離婚後2年から5年に延長されています。ただし、令和8年3月31日以前に離婚した場合は、従前どおり離婚後2年です。(法務省)
また、改正後は、財産の取得または維持についての寄与の程度は、異なることが明らかでないときは相等しいものとされています。
つまり、どちらか一方の名義になっている財産でも、婚姻中に夫婦の協力で築かれた財産であれば、実質的に分ける対象になります。
財産分与と慰謝料は別に考える
財産分与を受けたからといって、常に慰謝料請求ができなくなるわけではありません。
最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与がなされた場合でも、それが損害賠償を含めた趣旨と解されない場合や、精神的苦痛を慰謝するには足りない場合には、別に慰謝料を請求できることがあると判断しています。
そのため、離婚協議書や公正証書では、次のように分けて書くことが重要です。
財産分与として支払う金額
慰謝料として支払う金額
解決金として支払う金額
未払い婚姻費用として支払う金額
夫婦間の貸金や立替金
名目を混ぜると、後で何の支払いだったのか分かりにくくなります。
親権
令和8年4月1日施行の改正により、離婚後の親権については、父母双方を親権者とすることも、父母の一方を親権者とすることもできるようになっています。(法務省)
以前は、協議離婚の場合、父母の一方を親権者と定める必要がありました。
現在は、協議離婚では、父母の協議により、父母双方を親権者とするか、父母の一方を親権者とするかを定めます。
ただし、共同親権にする場合でも、次の点を決めておく必要があります。
子どもがどちらと暮らすか
監護者を定めるか
日常の監護教育を誰が行うか
進学や医療など重要事項をどう決めるか
親子交流をどう行うか
共同親権は、父母の都合で選ぶものではありません。
子どもの利益を中心に、実際に父母が連絡を取り合えるか、子どもの生活が安定するかを見て決める必要があります。
養育費
養育費は、子どもの生活、教育、医療、住まいなどに必要な費用です。
令和8年4月1日施行の改正では、父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子どもを養育する責務を負うことが明確にされています。(法務省)
養育費は、親権者になった人だけの問題ではありません。
子どもと一緒に暮らしていない親も、収入や生活状況に応じて養育費を分担します。
養育費を決める場合は、次の内容を具体的に書きます。
月額
支払日
支払開始月
支払終了月
振込先
振込手数料
進学費用
高額医療費
事情変更時の協議
「支払える範囲で支払う」「子どもが自立するまで支払う」といった書き方では、後で争いになりやすくなります。
親子交流
親子交流とは、離れて暮らす親と子どもが、会ったり、連絡を取ったりして、親子関係を続けることです。
以前は「面接交渉」「面会交流」という言葉が使われていました。現在の記事では、「親子交流」と書く方が自然です。
親子交流では、次の内容を決めます。
頻度
日時
場所
受け渡し方法
宿泊の有無
長期休暇の扱い
電話やオンライン交流
予定変更の連絡方法
子どもの体調不良時の扱い
親子交流は、親の権利だけで決めるものではありません。
子どもの年齢、生活リズム、学校行事、体調、気持ちを踏まえて決めます。
離婚の記事で注意すべき古い表現
離婚に関する記事では、現在の法律と合わない表現を避ける必要があります。
- 強度の精神病を独立の離婚原因として説明する
- 離婚後の親権者は必ず父母の一方と説明する
- 面接交渉権という言葉だけで説明する
- 養育費は親権者だけの問題と説明する
- 夫の年金の半分を妻がもらえると説明する
- 財産分与は離婚後2年以内とだけ説明する
これらは、現在の法令や実務に照らすと、そのままでは使いにくい表現です。
令和8年4月1日以降の記事では、親権、養育費、親子交流、財産分与、裁判離婚原因の説明を最新の内容に合わせる必要があります。
まとめ
離婚では、民法を中心に、戸籍法、家事事件手続法、民事訴訟法などが関係します。
不貞行為や暴力がある場合は、不法行為として慰謝料請求が問題になります。
財産分与は、慰謝料とは別に、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を清算する手続です。
裁判離婚では、民法770条の離婚原因が問題になります。
令和8年4月1日以降は、強度の精神病の規定が削除され、離婚後の親権は父母双方または父母の一方を選ぶ制度になっています。
養育費や親子交流についても、子どもの利益を中心に考える必要があります。
離婚の法律は、感情の勝ち負けを決めるためのものではありません。
離婚後の生活、子どもの養育、お金の支払い、住まい、将来の手続を、後で揉めにくい形に整えるために使うものです。
