離婚時の清算条項の書き方|後からの金銭要求を防ぐ重要条項【長崎】

清算条項とは、公正証書に定めたもののほかには、夫婦の間に金銭その他の請求関係が残っていないことを確認する条項です。

離婚公正証書では、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、住まい、住宅ローン、親子交流など、多くの項目を定めます。その最後に清算条項を置くことで、「この公正証書で決めた内容をもって、離婚に関する夫婦間の清算は終わりです」と確認します。

清算条項は、離婚後の再請求を防ぐために重要です。

一方で、入れ方を間違えると、本来残しておくべき請求や手続まで終わったように読めてしまいます。

目次

清算条項で確認すること

清算条項を入れる前に、次の内容を確認します。

財産分与はすべて決まっているか
慰謝料や解決金は決まっているか
未払い婚姻費用は残っていないか
夫婦間の貸金や立替金は残っていないか
年金分割の手続は残すのか
不動産登記の手続は残すのか
住宅ローンや連帯保証の問題は残るのか
養育費、進学費用、医療費はどう扱うのか
親子交流の見直し余地を残すのか

財産分与については、2026年4月1日施行の改正により、家庭裁判所に財産分与を求めることができる期間が、離婚後2年から5年に延長されています。ただし、公正証書で財産分与を含めて清算した場合は、その合意内容が後の請求に影響します。清算条項を入れる前に、財産関係を十分に確認する必要があります。(法務省)

基本の清算条項

夫婦間の財産分与、慰謝料、婚姻費用、貸金、立替金などをすべて整理した場合は、次のように書きます。

記載例1 基本形

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

この書き方は、もっとも基本的な清算条項です。

「債権債務がない」と書く方法もあります。ただし、離婚では、財産分与、慰謝料、婚姻費用、解決金など、性質の異なる金銭が出てきます。そのため、「名目のいかんを問わず、金銭その他の請求をしない」と書く方が、離婚公正証書では分かりやすいです。

財産分与と慰謝料を清算する場合

財産分与と慰謝料を定めたうえで、他には請求しないと確認する場合です。

記載例2 財産分与・慰謝料を含めて清算する場合

甲及び乙は、本公正証書に定める財産分与及び慰謝料のほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

この書き方では、公正証書に定めた財産分与と慰謝料は残ります。

それ以外の請求はしないという意味になります。

一部の請求を残す場合

清算条項を入れても、あえて残す手続や請求があります。

たとえば、年金分割、不動産登記、住宅ローンの金融機関手続、子どもの進学費用、高額な医療費などです。

この場合は、「ただし書き」で除外します。

記載例3 残す手続がある場合

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。
ただし、年金分割の請求手続、不動産の所有権移転登記手続、住宅ローンに関する金融機関との協議その他本公正証書において別途手続を予定した事項については、この限りでない。

この書き方では、公正証書で予定した手続は残ります。

清算条項を入れても、年金分割や登記の協力義務まで消えないようにするためです。

養育費との関係

清算条項は、夫婦間の離婚条件を整理するための条項です。

養育費は、子どもの生活を支えるための費用です。父母が清算条項を入れたからといって、将来の事情変更や子どもの必要に応じた協議まで当然に封じるものではありません。

2026年4月1日施行の改正では、父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子を養育する責務を負うことが明確にされています。養育費は、離婚後も子どもの生活に関わる重要な項目です。(法務省)

そのため、養育費、進学費用、高額な医療費については、必要に応じて清算条項から外しておきます。

記載例4 子どもに関する費用を残す場合

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。
ただし、丙の養育費、進学費用、高額な医療費その他丙の監護養育に必要な費用について、本公正証書に定める協議を行う場合は、この限りでない。

この書き方では、夫婦間の財産関係は清算しつつ、子どもの将来費用については協議の余地を残します。

年金分割との関係

年金分割は、夫婦間の金銭の支払いとは性質が異なります。

公正証書で年金分割の合意をしていても、年金事務所で請求手続をしなければ、年金分割は行われません。

そのため、年金分割を行う場合は、清算条項から除外しておく方が安全です。

記載例5 年金分割を残す場合

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。
ただし、甲乙間の年金分割に関する請求手続及びこれに必要な協力については、この限りでない。

不動産登記との関係

不動産を財産分与する場合、公正証書に書いただけでは名義は変わりません。

所有権移転登記が必要です。

清算条項を入れる場合は、不動産登記手続が残ることを明確にしておきます。

記載例6 不動産登記を残す場合

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。
ただし、別紙物件目録記載の不動産についての所有権移転登記手続、登記に必要な書類の授受その他登記に必要な協力については、この限りでない。

住宅ローンとの関係

住宅ローンや連帯保証が残る場合は、清算条項を慎重に書きます。

夫婦間で「夫が支払う」「妻が負担する」と決めても、金融機関はその合意に当然には拘束されません。

連帯債務者や連帯保証人を外すには、金融機関の承諾が必要です。

そのため、住宅ローンに関する協議や報告義務が残る場合は、清算条項から除外します。

記載例7 住宅ローンの手続を残す場合

甲及び乙は、本公正証書に定めるもののほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。
ただし、別紙物件目録記載の不動産に係る住宅ローン、連帯債務、連帯保証、金融機関との協議及び本公正証書に定める報告義務については、この限りでない。

未払い婚姻費用を含めて清算する場合

離婚前の別居期間中に、生活費の未払いがある場合があります。

これを婚姻費用として公正証書に入れる場合は、清算条項でその処理が終わったことを確認します。

記載例8 未払い婚姻費用を含める場合

甲及び乙は、本公正証書に定める未払い婚姻費用、財産分与及び慰謝料のほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

この書き方では、未払い婚姻費用も清算対象に含めています。

婚姻費用を別に請求する余地を残さない場合に使います。

夫婦間の貸金や立替金を含める場合

夫婦間で貸金、立替金、親族への返済などがある場合は、清算条項の前に必ず整理します。

清算条項を入れた後で、「実は貸していた」「立て替えていた」と言っても、請求しにくくなることがあります。

記載例9 貸金・立替金を含めて清算する場合

甲及び乙は、本公正証書に定める財産分与、慰謝料、婚姻費用、貸金及び立替金のほか、本件離婚に関し、名目のいかんを問わず、互いに何らの金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

あえて清算条項を入れない場合

財産関係がまだ整理できていない場合は、清算条項を入れないこともあります。

不動産の評価が終わっていない。
預金や保険の資料が出ていない。
退職金の見込額が分からない。
住宅ローンの金融機関確認が終わっていない。
年金分割の情報通知書を取っていない。
未払い婚姻費用の額に争いがある。

このような場合に清算条項を入れると、後で必要な請求がしにくくなります。

公正証書を急ぐ場合でも、清算条項を入れるかどうかは慎重に確認します。

記載例10 財産分与を後日協議に残す場合

甲及び乙は、本公正証書に定める養育費、親子交流及び婚姻費用について合意する。
甲及び乙は、財産分与については、今後必要な資料を確認したうえで、別途協議する。

この書き方では、財産分与を清算していません。

後で財産分与について協議する余地を残します。

清算条項で避けたい書き方

清算条項では、次のような書き方は避けた方がよいです。

これですべて終わりとする
今後一切何も言わない
子どもの費用も含めて一切請求しない
年金分割も含めてすべて清算する
住宅ローンもすべて解決済みとする
不動産登記も終わったものとする

このような書き方は、何が終わり、何が残るのか分かりにくくなります。

公正証書では、清算するものと、残すものを分けて書きます。

まとめ

清算条項は、公正証書に定めたもののほかには、夫婦間に金銭その他の請求関係が残っていないことを確認する条項です。

離婚後の再請求を防ぐために重要です。

ただし、財産分与、慰謝料、未払い婚姻費用、貸金、立替金、年金分割、不動産登記、住宅ローン、養育費、進学費用、高額な医療費を確認しないまま入れると、後で必要な請求や手続がしにくくなります。

2026年4月1日施行の改正では、財産分与を家庭裁判所に求めることができる期間が離婚後5年に延長されています。

それでも、公正証書で清算条項を入れた場合は、その合意内容が後の請求に影響します。

清算条項は、最後に入れる短い条項ですが、離婚公正証書全体の出口を決める重要な条項です。

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