親子交流とは、子どもと離れて暮らす父または母が、子どもと会ったり、連絡を取ったりして、親子の関係を続けることです。
以前は「面接交渉」「面会交流」という言葉が使われていました。現在の記事では、「親子交流」と書く方が自然です。
2026年4月1日施行の民法等改正では、親権、養育費、親子交流など、父母の離婚後の子どもの養育に関するルールが見直されています。親子交流についても、子どもの利益を最優先に考えることが前提になります。法務省は、改正法について、子どもの養育に関する父母の責務を明確化し、親権・監護、養育費、親子交流などの規定を見直すものと説明しています。(法務省)
親子交流で決めること
親子交流の条項では、次の内容を決めます。
親子交流の頻度
実施する曜日や時間帯
開始時刻と終了時刻
受け渡し場所
送迎の方法
宿泊の有無
長期休暇中の扱い
電話、メール、オンライン通話の扱い
学校行事への参加
子どもの体調不良時の扱い
予定変更の連絡方法
父母間の連絡方法
親子交流は、子どもの生活に直接関わります。
そのため、父母の都合だけで決めるのではなく、子どもの年齢、学校、生活リズム、体調、気持ちを考えて定めます。
「月1回」か「月1回程度」か
親子交流では、「月1回」と書くか、「月1回程度」と書くかで意味が変わります。
「月1回」と書くと、毎月1回の実施が前提になります。
一方で、子どもの体調、学校行事、父母の仕事、台風や感染症などで、予定どおり実施できないことがあります。
そのため、公正証書では、柔軟に運用したい場合は「月1回程度」と書く方が使いやすいです。
ただし、「月1回程度」とだけ書くと、いつ、どこで、どのように会うのかが分かりにくくなります。
そのため、基本の形と、変更時の協議方法をあわせて書くことが大切です。
公正証書に書く意味
親子交流は、お金の支払いとは性質が違います。
養育費や慰謝料の支払いは、強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことで、支払いが滞った場合に強制執行を検討できます。民事執行法上、執行証書としての公正証書は、金銭の一定額の支払いなどを目的とする請求について作成されるものです。(e-Gov法令検索・民事執行法)
一方で、親子交流そのものは、金銭の支払いではありません。
公正証書に親子交流の条項を書いても、それだけで親子交流を直ちに強制執行できるわけではありません。
それでも、公正証書に書く意味はあります。
父母が合意した内容を確認できる
親子交流の基本形が分かる
後で調停になったときの資料になる
子どもの生活を中心にした約束として残せる
父母間の連絡方法を確認できる
公正証書では、親子交流の実施方法を、後で見ても分かる形にしておくことが大切です。
親子交流が実施されない場合
親子交流が実施されない場合は、まず父母で理由を確認します。
子どもの体調不良なのか。
学校行事なのか。
父母の仕事の都合なのか。
子どもが会いたがらないのか。
父母間の不信感なのか。
暴力やDV、虐待のおそれがあるのか。
理由によって対応は変わります。
父母だけで決められない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用することがあります。
2026年4月1日施行の改正では、家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行う制度、婚姻中別居の場合の親子交流、父母以外の親族と子どもの交流に関するルールも設けられています。法務省は、家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行う制度や、婚姻中別居の場合の親子交流のルールが明確化されたことを説明しています。(法務省パンフレット)
記載例1 基本形
甲と乙は、甲が丙及び丁と、月1回程度、親子交流を行うことを確認する。
親子交流の具体的な日時、場所、方法は、丙及び丁の年齢、生活状況、学校行事、体調その他子どもの利益を考慮し、甲乙間で協議して定める。
この書き方は、もっとも基本的な形です。
柔軟に運用しやすい一方で、具体性は高くありません。
父母間の関係が比較的良好で、予定をその都度決められる場合に向いています。
記載例2 月1回、時間帯を決める場合
甲と乙は、甲が丙と、月1回程度、親子交流を行うことを確認する。
親子交流は、原則として毎月第2日曜日の午前10時から午後5時まで行う。
受け渡し場所は、乙の住所地付近の○○駅改札前とする。
甲は、親子交流終了時刻までに、丙を前項の受け渡し場所へ送り届ける。
子どもの体調不良、学校行事その他やむを得ない事情により予定日に実施できない場合は、甲乙間で代替日を協議する。
この形では、日時、時間、受け渡し場所、送迎方法まで定めています。
後で確認しやすい書き方です。
記載例3 宿泊なしの場合
甲と乙は、甲が丙と、月1回程度、親子交流を行うことを確認する。
親子交流は、原則として毎月第3土曜日の午前10時から午後7時まで行う。
甲は、丙を宿泊させないものとし、同日午後7時までに、乙の住所地又は甲乙間で協議して定めた場所へ丙を送り届ける。
実施日、受け渡し場所その他必要な事項は、丙の学校行事、体調及び生活状況を考慮し、甲乙間で協議して定める。
この形は、宿泊を認めない場合の書き方です。
帰宅時刻と送迎方法を明確にしておくと、後で揉めにくくなります。
記載例4 長期休暇中の宿泊を認める場合
甲と乙は、甲が丙と、春休み、夏休み及び冬休みの期間中、それぞれ1回、宿泊を伴う親子交流を行うことを確認する。
宿泊を伴う親子交流は、1回につき2泊3日までとする。
具体的な日程、受け渡し場所、送迎方法は、丙の学校行事、部活動、体調及び生活状況を考慮し、甲乙間で事前に協議して定める。
甲は、宿泊を伴う親子交流中、丙の健康、安全及び生活リズムに配慮する。
この形は、長期休暇中だけ宿泊を認める場合に使います。
宿泊を認める場合は、日数、時期、送迎方法を明確にします。
記載例5 当面は短時間から始める場合
甲と乙は、甲が丙と、当分の間、月1回程度、親子交流を行うことを確認する。
当分の間の親子交流は、1回につき2時間程度とし、丙の様子を見ながら、甲乙間で協議のうえ、時間及び方法を見直すものとする。
具体的な日時、場所、受け渡し方法は、丙の年齢、体調、生活状況及び気持ちを考慮し、甲乙間で協議して定める。
この形は、子どもが小さい場合、長期間会っていない場合、親子交流に不安がある場合に使いやすい書き方です。
最初から長時間にせず、子どもの様子を見ながら進めます。
記載例6 オンライン交流を入れる場合
甲と乙は、甲が丙と、月1回程度、対面による親子交流を行うことを確認する。
甲は、前項の親子交流とは別に、丙と月2回程度、電話又はオンライン通話により交流することができる。
オンライン通話の日時、方法及び時間は、丙の年齢、生活時間、学校行事及び体調を考慮し、甲乙間で協議して定める。
甲及び乙は、オンライン通話に際し、丙に過度な負担をかけないよう配慮する。
遠方に住んでいる場合や、対面が難しい時期がある場合は、オンライン交流を入れておくと運用しやすくなります。
記載例7 学校行事への参加
甲と乙は、丙の入学式、卒業式、運動会、発表会その他学校行事への甲の参加について、丙の気持ち、学校の取扱い及び行事の内容を踏まえ、事前に協議する。
乙は、甲が参加できる学校行事について、学校から通知があった場合、相当な期間内に甲へ連絡する。
この条項は、学校行事への参加を予定する場合に使います。
ただし、学校側の運用や子どもの気持ちに配慮する必要があります。
記載例8 予定変更の連絡方法
甲又は乙は、親子交流の予定日に実施できない事情が生じた場合、できるだけ速やかに相手方へ連絡する。
前項の場合、甲及び乙は、丙の利益を考慮し、代替日、代替方法その他必要な事項について誠実に協議する。
連絡方法は、原則としてメール又はメッセージアプリによるものとし、緊急の場合は電話によるものとする。
親子交流では、予定変更が起こります。
変更時の連絡方法を決めておくと、父母間の負担が減ります。
記載例9 安全面に配慮する場合
甲及び乙は、親子交流の実施にあたり、丙の安全、健康、生活リズム及び気持ちを尊重する。
甲は、親子交流中、丙に対し、乙を非難する発言、離婚に関する事情を問いただす発言、その他丙に心理的負担を与える言動をしない。
乙は、正当な理由なく、甲と丙との親子交流を妨げない。
この条項は、子どもを父母間の対立に巻き込まないための確認です。
「相手を悪く言わない」ことを入れておくと、運用上の目安になります。
記載例10 DVや虐待のおそれがある場合
甲と乙は、丙の安全及び心身の安定を最優先に考え、親子交流の実施方法について、必要に応じて第三者機関、家庭裁判所その他適切な機関の利用を含め、別途協議する。
丙の安全又は心身に支障が生じるおそれがある場合は、甲乙間で協議のうえ、親子交流の方法、場所、時間又は実施時期を見直す。
DV、虐待、強い支配、脅しのおそれがある場合は、安易に通常の親子交流条項を入れない方がよいです。
安全確保を優先します。
必要な場合は、弁護士や家庭裁判所の手続を利用します。
親子交流条項で避けたい書き方
親子交流では、次のような書き方は避けた方がよいです。
甲はいつでも丙と会える
乙は甲の希望どおり親子交流を認める
丙が嫌がっても必ず会わせる
親子交流はすべて乙の判断で決める
甲と丙は自由に連絡できる
日時、場所、方法は後で決める
このような書き方は、運用で揉めやすくなります。
親子交流は、父母の権利だけでなく、子どもの生活と気持ちに関わる約束です。
自由すぎる条項も、厳しすぎる条項も、実務では使いにくくなります。
公正証書での位置づけ
親子交流条項は、離婚公正証書の中では、養育費や親権者条項と並んで重要です。
ただし、養育費のように金額を決めて強制執行する条項とは違います。
親子交流は、子どもの状況に合わせて続ける約束です。
そのため、公正証書では、次の3つを意識して書きます。
- 基本の頻度
- 基本の方法
- 変更時の協議方法
この3つがあれば、後で生活が変わったときにも、見直しやすくなります。
まとめ
親子交流は、離れて暮らす父または母と子どもが、親子の関係を続けるための約束です。
現在は、「面接交渉権」ではなく、「親子交流」と書く方が自然です。
公正証書では、親子交流の頻度、時間、場所、受け渡し方法、宿泊の有無、長期休暇、オンライン交流、予定変更の方法を具体的に書きます。
ただし、細かく決めすぎると、子どもの体調や学校行事に対応しにくくなります。
そのため、基本の形を定めたうえで、変更時の協議方法を入れておくことが大切です。
親子交流は、父母の都合ではなく、子どもの利益を中心に考えます。
安全面に不安がある場合は、通常の条項をそのまま使わず、家庭裁判所、弁護士、第三者機関の利用も含めて慎重に決める必要があります。
