離婚届は、夫婦が離婚するために市区町村役場へ提出する戸籍の届出です。
ただし、離婚届を出せば、それだけで離婚後の生活が整うわけではありません。子どもがいる場合は、親権・監護・養育費・親子交流を考える必要があります。財産がある場合は、財産分与、年金分割、住まい、住宅ローンも整理します。
離婚届は、最後に出す書類です。
先に決めるべきことを決めずに提出すると、離婚後にお金や子どものことで困ることがあります。
離婚届を出す前に確認すること
協議離婚では、夫婦双方に離婚する意思があることが必要です。
未成年の子がいる場合は、離婚後の親権者を定める必要があります。令和8年4月1日以降は、離婚後の親権について、父母双方を親権者とすることも、父母の一方を親権者とすることもできるようになっています。協議離婚では、父母が協議して、父母双方を親権者とするか、一方を親権者とするかを定めます。
離婚届を出す前に、少なくとも次の項目を確認します。
親権・監護
養育費
親子交流
財産分与
慰謝料
年金分割
住まい住宅
ローン
氏と戸籍
離婚協議書・公正証書にする内容
離婚届そのものは役所の手続です。
しかし、離婚後の生活を守るのは、離婚届ではなく、離婚条件の整理です。
離婚届で成立する離婚と、報告として届け出る離婚
離婚には、協議離婚と、裁判所が関与する離婚があります。
協議離婚は、夫婦が離婚に合意し、離婚届が市区町村役場で受理されることで成立します。協議離婚では、夫婦の署名、成人である証人2名の署名、未成年の子がいる場合の親権者の記載が必要です。成人年齢は18歳以上です。
裁判所が関与する離婚には、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚があります。これらの場合、離婚そのものは調停成立、和解成立、認諾、審判確定、判決確定などによって成立します。離婚届は、その内容を戸籍に反映させるための届出です。
離婚届の用紙
離婚届の用紙は、市区町村役場の戸籍窓口で受け取れます。
届書の様式は全国共通です。別の市区町村で受け取った離婚届を使うこともできます。記入するときは、黒インクのペンまたは黒のボールペンを使います。鉛筆、消せるボールペン、消えやすいインクは使わない方が安全です。
令和8年4月1日から、離婚届の様式は親権制度の改正に合わせて変わっています。
旧様式の離婚届を使う場合、未成年の子の氏名欄に共同親権の記載欄がないことがあります。その場合は、別紙を添付して提出する必要がある自治体があります。新しい様式を使う方が安全です。
離婚届の主な記入欄
氏名
離婚前の現在の氏名を書きます。
戸籍に記載されている氏名どおりに書きます。旧字体、異体字、続柄などは、戸籍の記載と合うように確認します。
生年月日は、届書の様式に従って書きます。和暦で書く欄では、「昭和」「平成」「令和」などを省略せずに書きます。
住所
住民登録をしている住所を書きます。
離婚届と同時に住所を変更する場合でも、離婚届だけで住所変更はできません。転入届、転居届、転出届などは別の手続です。
休日や夜間に離婚届を出した場合、住所変更の手続は後日、役場の開庁時間に行う必要があります。
本籍
婚姻中の夫婦の本籍を書きます。
本籍は、住所とは違います。住んでいる場所を書けばよいわけではありません。
筆頭者も正確に書きます。筆頭者は、戸籍の最初に記載されている人です。家を建てた人、世帯主、親族の長とは限りません。
不安な場合は、戸籍の記載を確認して書きます。
父母の氏名
夫と妻それぞれの父母の氏名を書きます。
父母が亡くなっている場合でも記入します。父母が婚姻中で同じ氏の場合、母の氏は省略する様式になっていることがあります。届書の欄に従って記入します。
続柄は、戸籍に記載されているとおりに書きます。
「長男」「二男」「長女」「二女」などは、戸籍上の記載と合わせます。
離婚の種類
協議離婚の場合は、協議離婚の欄に記入します。
調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の場合は、それぞれ該当する欄に記入します。
裁判所が関与する離婚の場合は、成立日または確定日も確認します。
調停離婚と和解離婚は成立の日、認諾離婚は認諾の日、審判離婚と判決離婚は確定の日から10日以内に届出をする必要があります。
婚姻前の氏にもどる者の本籍
婚姻によって氏を変えた人は、離婚すると原則として婚姻前の氏に戻ります。
婚姻前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを記入します。
ただし、婚姻前の戸籍が除籍されている場合などは、元の戸籍に戻れないことがあります。その場合は、新しい戸籍を作る形になります。
離婚後も婚姻中の氏を使いたい場合は、離婚届とは別に「離婚の際に称していた氏を称する届」を出します。この届は、離婚届と同時に出すこともできますし、離婚の日から3か月以内に出すこともできます。
未成年の子の氏名と親権
未成年の子がいる場合は、離婚後の親権者を定める必要があります。
令和8年4月1日以降は、父母双方を親権者とするか、父母の一方を親権者とするかを定めます。共同親権にする場合でも、子どもが誰と暮らすのか、日常の監護を誰が担うのか、養育費や親子交流をどうするのかは、別に考える必要があります。
親権者を離婚届に書いても、それだけで子どもの戸籍が移るわけではありません。
たとえば、母が親権者になっても、子どもが当然に母の戸籍に入るわけではありません。子どもの氏を変え、親の戸籍に入れるには、家庭裁判所の「子の氏の変更許可」と、市区町村役場への入籍届が必要になる場合があります。
同居期間
夫婦が同居を始めた年月と、別居した年月を書きます。
別居していない場合は、届書の指示に従って記入します。
この欄は統計上の項目でもあります。戸籍の身分関係を決める中心項目ではありませんが、分かる範囲で正確に書きます。
別居する前の住所
すでに別居している場合は、別居する前に夫婦で住んでいた住所を書きます。
別居していない場合は、届書の指示に従います。
世帯のおもな仕事・夫妻の職業
該当する欄にチェックします。
この欄も統計上の項目です。分かる範囲で該当するものを選びます。
その他欄
その他欄は、補足が必要なときに使います。
訂正内容を書く場合や、役場から案内された事項を書く場合があります。
不安な場合は、自分で判断せず、届出先の役場で確認してから記入します。
届出人署名
協議離婚では、夫婦双方が署名します。
押印は任意です。令和3年9月1日から、戸籍届書への押印義務は廃止され、署名だけでも届出できる取扱いになっています。ただし、任意で押印することはできます。
裁判所が関与する離婚では、相手方の署名や証人欄の記載は不要です。届書には、申立人、訴えを提起した人など、届出をする側が署名します。
証人
協議離婚では、成人の証人2名の署名が必要です。
成人とは18歳以上の人です。親族、友人、知人でも構いません。証人は、夫側から1名、妻側から1名でなければならないという決まりはありません。
証人欄は、証人本人に書いてもらいます。
押印は任意です。
証人欄に記入漏れがあると、離婚届がその場で受理されない、または後で補正を求められることがあります。氏名だけでなく、生年月日、住所、本籍なども届書の欄に従って書いてもらいます。
提出先
離婚届は、届出人の本籍地または所在地の市区町村役場へ提出します。
所在地には、住所地のほか、一時的に滞在している場所も含まれます。ただし、実務上は、本籍地または住所地の役場へ提出することが多いです。
離婚届は、必ず夫婦二人で提出しなければならないわけではありません。
届書に必要な署名がされていれば、夫婦の一方が持参することも、使者が持参することもできます。
ただし、持参する人は本人確認書類を求められることがあります。
戸籍謄本の添付
令和6年3月1日から、戸籍届出時の戸籍証明書等の添付は、原則として不要になっています。
以前は、本籍地以外の市区町村に離婚届を出す場合、戸籍謄本の添付が必要でした。現在は、提出先の市区町村が本籍地の戸籍を確認できるようになったため、原則として戸籍謄本を添付しなくてよくなっています。(法務省)
ただし、一部の戸籍の状況や外国籍の方が関係する場合など、追加書類が必要になることがあります。
提出前に、届出先の市区町村役場へ確認します。
離婚方法ごとの必要書類
協議離婚の場合は、原則として離婚届を提出します。
裁判所が関与する離婚の場合は、離婚届に加えて、裁判所の書類が必要です。
| 離婚の種類 | 必要書類 |
|---|---|
| 協議離婚 | 離婚届 |
| 調停離婚 | 離婚届、調停調書の謄本 |
| 審判離婚 | 離婚届、審判書の謄本、確定証明書 |
| 和解離婚 | 離婚届、和解調書の謄本 |
| 認諾離婚 | 離婚届、認諾調書の謄本 |
| 判決離婚 | 離婚届、判決書の謄本、確定証明書 |
自治体によって案内の表記が少し違う場合があります。
提出前に、届出先の役場で必要書類を確認します。
離婚届と住所変更は別手続
離婚届を出しても、住民票の住所は自動では変わりません。
離婚と同時に転居する場合は、転入届、転居届、転出届などの住所変更手続が必要です。
また、マイナンバーカード、国民健康保険、児童手当、ひとり親家庭の手続、学校関係の手続なども、別に必要になることがあります。
離婚届と子どもの戸籍は別手続
親権者を定めても、子どもの戸籍が自動的に親権者の戸籍へ移るわけではありません。
たとえば、離婚によって母が新しい戸籍を作り、子どもをその戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所で子の氏の変更許可を受け、その後、市区町村役場で入籍届を出す必要があります。
親権、氏、戸籍、住所は、それぞれ別の手続です。
ここを混同すると、離婚後に子どもの手続で困ることがあります。
離婚届を出されるのを防ぎたい場合
離婚届を書いた後で気が変わった場合や、相手が勝手に離婚届を出しそうな場合は、不受理申出を検討します。
不受理申出をしておくと、本人の意思に基づかない協議離婚届が受理されることを防ぎやすくなります。
離婚する意思がない場合は、離婚届が出される前に対応することが大切です。
すでに離婚届が受理された後は、不受理申出では戻せません。
その場合は、協議離婚無効確認や協議離婚取消しの問題になります。
離婚届を出す前に書面を作る
協議離婚をする場合は、離婚届を出す前に、離婚協議書や公正証書を作ることを検討します。
特に、次の約束がある場合は、書面化しておく必要があります。
養育費
財産分与
慰謝料
年金分割
住宅ローン
不動産
親子交流
進学費用
高額な医療費
清算条項
口約束だけでは、後で支払いが止まったときに困ります。
養育費や分割払いの慰謝料・財産分与など、お金の支払いが続く約束は、公正証書にすることを検討します。
まとめ
離婚届は、離婚を戸籍に反映させるための重要な書類です。
協議離婚では、夫婦双方の離婚意思、夫婦の署名、成人である証人2名の署名が必要です。
押印は任意です。
令和8年4月1日以降は、未成年の子がいる場合、父母双方を親権者とするか、父母の一方を親権者とするかを定める制度になっています。
令和6年3月1日以降は、戸籍届出時の戸籍謄本の添付は、原則として不要です。
ただし、離婚届を出すだけでは、養育費、財産分与、年金分割、住まい、子どもの戸籍は整いません。
離婚届を出す前に、子どもとお金の約束を整理し、必要に応じて離婚協議書や公正証書にしておくことが大切です。
