不倫への対応は、復讐ではなく、法律上の請求として考える必要があります。
不倫が許せない。
謝罪してほしい。
慰謝料を払ってほしい。
もう会わないと約束してほしい。
このように思うことは自然です。ただし、怒りのままに相手へ連絡したり、相手の職場や家族へ知らせたり、SNSに書いたりすると、こちらが別の責任を問われることがあります。
不倫への対応は、証拠、請求内容、連絡方法、合意書の順に整理します。
不倫は損害賠償の問題になる
不倫は、法律上は不貞行為や不法行為の問題として扱われます。
不貞行為とは、配偶者のある人が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の人と性的関係を持つことです。
不貞行為がある場合、不貞をした配偶者や不貞相手に対して、慰謝料請求が問題になることがあります。
ただし、不貞相手に請求するには、不貞行為があったこと、相手が既婚者であることを知っていたこと、または知ることができたことなどが問題になります。
相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに過失もない場合は、慰謝料請求が認められにくくなります。
まず確認すること
不倫相手に連絡する前に、次の点を確認します。
不貞行為の証拠があるか
相手が既婚者だと知っていたか
不倫が始まった時期
不倫が続いているか
夫婦関係がいつから悪化していたか
別居しているか
離婚するのか、婚姻を続けるのか
慰謝料を誰に請求するのか
相手に何を約束させたいのか
ここを整理しないまま連絡すると、感情的なやり取りになりやすくなります。
慰謝料を請求したいのか。
謝罪だけでよいのか。
接触禁止まで求めるのか。
離婚条件も整理するのか。
目的を分ける必要があります。
してはいけないこと
不倫相手が許せない場合でも、してはいけないことがあります。
暴力を振るう
脅す
相手の職場へ押しかける
相手の家族へ言いふらす
SNSに実名や写真を投稿する
性的な画像や動画を広める
相手のスマートフォンやSNSを勝手に見る
GPSを無断で取り付ける
「払わなければ会社に言う」と迫る
刑法では、生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告げて脅迫した場合、脅迫罪が問題になります。また、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合は、名誉毀損罪が問題になります。e-Gov法令検索・刑法 (laws.e-gov.go.jp)
さらに、私的な性的画像を第三者に提供したり、インターネット上で公開したりすると、別の重大な法的問題になります。e-Gov法令検索・私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 (laws.e-gov.go.jp)
相手が悪いとしても、こちらが違法な行動を取れば、話し合いは大きくこじれます。
証拠を整理する
慰謝料請求を考える場合は、証拠が重要です。
感情ではなく、事実を確認できる資料を整理します。
ラブホテルへの出入り
宿泊を伴う旅行
不貞を認めた発言
メッセージの内容
調査会社の報告書
宿泊施設の利用記録
クレジットカード明細
時系列のメモ
ただし、証拠を集める方法には注意が必要です。
相手のスマートフォンを勝手に開く、SNSやメールに無断でログインする、無断でGPSを取り付けるなどの方法は、別の問題を生むことがあります。
証拠は、後で説明できる形で、必要な範囲にとどめて整理します。
内容証明を送る場合
不倫相手に慰謝料を請求する場合、内容証明郵便を使うことがあります。
内容証明は、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度です。
ただし、内容証明を送っただけで、相手から必ず支払いを受けられるわけではありません。
内容証明は、請求の意思を明確に伝えるための通知です。
内容証明に書く内容は、感情的な非難ではなく、事実と請求を整理します。
不貞行為があったと考える理由
請求する慰謝料の金額
支払期限
振込先
今後の連絡方法
接触禁止を求める場合の内容
回答期限
相手を侮辱する言葉や、脅しと受け取られる表現は避けます。
慰謝料の金額
不倫慰謝料の金額は、一律ではありません。
事案によって変わります。
婚姻期間
不貞の期間
不貞の回数
不貞の態様
夫婦関係への影響
別居に至ったか
離婚に至ったか
未成熟子がいるか
相手が既婚者と知っていたか
発覚後の対応
謝罪や支払いの有無
短期間の不貞で、夫婦関係が修復している場合は低くなりやすく、長期間の不貞、同棲、別居、離婚につながった場合は高くなりやすい傾向があります。
ただし、実際の金額は、証拠と具体的な事情によって変わります。
離婚慰謝料と不貞慰謝料は分ける
不倫相手に対する請求では、不貞行為そのものの慰謝料と、離婚したことによる慰謝料を分けて考える必要があります。
最高裁平成31年2月19日判決は、不倫相手が単に夫婦の一方と不貞行為をしただけでは、当然に「夫婦を離婚させたこと」について不法行為責任を負うわけではないと判断しています。
不倫相手が離婚慰謝料の責任を負うのは、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当に干渉したなど、特段の事情がある場合に限られます。
そのため、不倫相手に何を請求するのかは、正確に整理する必要があります。
示談書や合意書を作る
不倫相手と話し合いがまとまった場合は、口約束で終わらせない方がよいです。
示談書や合意書にしておきます。
書面では、次の内容を整理します。
慰謝料の金額
支払期限
一括払いか分割払いか
振込先
支払いが遅れた場合の扱い
謝罪の有無
接触禁止
口外禁止
違反した場合の扱い
清算条項
分割払いにする場合は、途中で支払いが止まることがあります。
金額や支払方法によっては、公正証書にすることも検討します。
夫婦関係を続ける場合
離婚せずに夫婦関係を続ける場合は、不倫相手への請求だけで終わらせない方がよいです。
配偶者との間で、今後の約束を整理する必要があります。
不倫相手との連絡を断つこと
再発防止の約束
生活費の扱い
スマートフォンや連絡方法のルール
夫婦関係の修復に向けた話し合い
子どもへの影響をどう抑えるか
ただし、相手を過度に監視する約束や、生活を支配する約束は、別の問題を生むことがあります。
必要な範囲で、現実に守れる約束にすることが大切です。
離婚する場合
離婚する場合は、不倫慰謝料だけを見ていては足りません。
離婚後の生活全体を整理します。
財産分与
慰謝料
養育費
親権・監護
親子交流
年金分割
住まい
住宅ローン
婚姻費用
清算条項
慰謝料の話だけを先に進めると、財産分与や養育費が後回しになることがあります。
離婚する場合は、お金、子ども、住まい、書面を分けて整理する必要があります。
弁護士に相談すべき場面
次のような場合は、弁護士に相談する場面です。
相手が不貞を否認している
相手に弁護士が付いた
慰謝料の金額で争いがある
相手の職場や家族に関わる問題がある
裁判を考えている
証拠の適法性に不安がある
脅しや嫌がらせを受けている
代理交渉が必要である
行政書士は、当事者間で合意した内容を、示談書、合意書、離婚協議書、公正証書案に整理することはできます。
一方で、相手との代理交渉や裁判対応はできません。
まとめ
不倫への対応は、復讐ではなく、法律上の請求として整理します。
暴力、脅迫、職場への連絡、SNSでの暴露、性的画像の拡散は避けるべきです。
慰謝料を請求する場合は、不貞行為の証拠、相手の認識、夫婦関係の状態、時効、請求金額を確認します。
内容証明を送る場合も、感情的な非難ではなく、事実と請求内容を整理して書きます。
合意できた場合は、口約束で終わらせず、示談書や合意書に残します。
不倫が発覚したときほど、怒りで動かず、証拠、時系列、請求内容、離婚するかどうか、子どもとお金のことを分けて整理することが大切です。
