マンガでお読みいただけます。
マンガを読む
由美さんは、52歳。長崎市内に住み、近くで一人暮らしのお母様(80歳)を見ています。
お父様が亡くなったのは、4年前。
葬儀の日、福岡から帰ってきた弟さんは、こう言いました。
「姉ちゃん、お母さんのこと、頼むよ。俺は福岡で、なかなか帰ってこれないから。」
由美さんは、「うん、分かった」と答えました。
通帳を預かるようになって、3年
ある日、お母様が銀行のATMで困っていると、銀行から由美さんに電話がかかってきました。
その日から、由美さんが、お母様の通帳を預かることになりました。
由美さんは、週に2~3回、実家に通っています。
お薬を飲ませ、お料理を作り、お風呂の介助をします。
医療費、介護用品、デイサービスの自己負担。月1〜3万円を、由美さんが立て替えています。
ノートに記録していますが、弟さんには伝えていません。
「健太は、福岡で家族を養うのに精一杯だろうから。」
「私が長女だから、当たり前。」
そう自分に言い聞かせて、3年が経ちました。
母の口癖
お母様は、お盆とお正月に帰ってくる弟さんを、いつも嬉しそうに迎えました。
弟さんが帰った後、お母様は、何日も、弟さんの話をしました。
「健太は、福岡で頑張ってるからね。」
「健太のお嫁さん、いい人だよねぇ。」
由美さんは、台所で、お母様の夕食の準備をしながら、その話を聞きました。
夜、自分の家に帰って、お風呂に入る時、由美さんは、ふと、こう思うことがありました。
「私、いつまでこれをやるんだろう。」
すぐに、その思いを消しました。
由美さんは、もう諦めていました。
「お母さんは、健太のことばかり、心配する。それでいい。」
「私は、長女だから、ちゃんとやればいい。」
母の言葉
ある日、お母様が、ぽつりと言いました。
「私もそろそろ、何か準備しておかないとねぇ。」
「健太に、迷惑かけたくないからねぇ。」
由美さんは、台所で、その言葉を聞いていました。
毎日、お母様の世話をしているのは、由美さんです。
立て替え分を、ノートに記録しているのも、由美さんです。
それでも、お母様の心配は、いつも、福岡の弟さんなのです。
その夜、由美さんは、何気なく、検索窓に文字を打ち込みました。
「親 介護 お金 兄弟」
母と一緒に、書面を整える
電話30分の無料相談を経て、由美さんは、老後資金シミュレーション相談を申し込みました。
数週間後、由美さんは、お母様と一緒に、長崎の事務所で、木下先生と話しました。
福岡から帰ってきた弟さんも、合流しました。
3人で、お母様のお金の流れを確認しました。
弟さんは、ノートを見て、驚いた顔をしました。
「姉ちゃん、月にこんなに立て替えてくれてたの? 全然知らなかった…」
由美さんは、「いいの、私が見てるから」とだけ答えました。
木下先生は、お母様に、こう説明しました。
「お母様の意思で、ご家族のために残す書面です。お母様が、ご自身でお決めになることです。」
お母様は、しばらく考えて、こう言いました。
「由美にね…由美に、任せます。由美は、いつもそばにいてくれるから。」
由美さんは、お母様の言葉を聞きながら、台所で水を飲んだ夜のことを、思い出しました。
母の「ありがとう」
1か月かけて、書面が、形になりました。
公正証書の手続きを終えた後、お母様は、由美さんを、まっすぐに見ました。
そして、こう言いました。
「由美、ありがとう。」
「あんたが、いてくれて、本当に、助かったよ。」
由美さんは、お母様の顔を、見つめていました。
50年以上、お母様から、こんな風にまっすぐ見つめられて、「ありがとう」と言われたことは、ありませんでした。
由美さんは、何も言えませんでした。
ただ、お母様の手を、握り返しました。
由美さんは、今
それから、半年が経ちました。
弟さんは、3か月に一度、帰ってくるようになりました。
立て替え分も、由美さんの口座に振り込まれます。
通帳預かりは、続いています。
お母様の世話も、続いています。
ただ、由美さんの頭の片隅から、お母様のお金のことが、少しずつ、離れました。
由美さんは、長年やめていた書道を、再開しました。
パートが終わった後、週に一度、教室に通っています。
由美さんは、お母様のことを、最後まで見届けるつもりです。
そして、由美さんは、書道を再開した自分のことも、大切にしています。
本記事は、これまでにご相談を受けてきたご家族の状況を踏まえて構成したお話です。登場人物名はすべて仮名であり、特定のご家族を描いたものではありません。

