親の物忘れが増えてきた。
通院の付き添いが必要になった。
施設入居の話が出てきた。
親の判断があいまいになると、できることが減ります。本人の意思を確認できなければ、契約書を作れないことがあります。遺言書も、本人が内容を理解して作る必要があります。
なぜ親が話せるうちに決める必要があるのか
親のお金や手続きを家族が手伝うには、親本人の意思が大切です。
誰に通帳を預けたいのか。誰に支払いを手伝ってほしいのか。施設費にはどのお金を使ってよいのか。亡くなった後、財産をどう分けたいのか。
こうしたことは、親本人が判断できるうちに確認する必要があります。
親の判断があいまいになると、家族だけでは選べる方法が少なくなります。家庭裁判所が選んだ後見人が、親のお金を管理する形になることもあります。家族が考えていた進め方とは、違う形になることもあります。
だから、まだ親本人が話せる段階で、親のお金の流れ、家族の役割、必要な書面を確認しておくことが大切です。
最初に確認するのは親のお金の流れ
最初に確認するのは、親の財産と毎月のお金の流れです。
いきなり任意後見契約や遺言書を考える必要はありません。
先に、親のお金が今どうなっているかを見ます。
確認する項目は、次のとおりです。
・親の通帳がどこにあるか
・年金がどの通帳に入っているか
・毎月の生活費はいくらか
・医療費、薬代、介護費はいくらか
・施設で暮らす場合、毎月いくらかかりそうか
・家族が立て替えているお金があるか
・保険や不動産があるか
・借入れや未払いがあるか
ここまで分かると、親のお金が何年もつかを考えやすくなります。
施設費を払えるか。誰が支払いをするか。兄弟姉妹にどう説明するか。こうした話も見えやすくなります。
親のお金の全体が見えないまま書面だけ作ると、家族の実情に合わないことがあります。
決めておくことは4つ
親が話せるうちに決めておきたいことは、大きく4つあります。
1つ目は、通帳と支払いのことです。
誰が通帳を預かるのか。病院代や薬代を誰が払うのか。施設費を誰が確認するのか。現金を引き出した時に、何に使ったかをどう残すのか。
ここがあいまいなままだと、介護している家族に負担が集まりやすくなります。
2つ目は、介護費と施設費のことです。
親の年金で足りるのか。預金を毎月いくら取り崩すのか。家族の立て替えが必要になるのか。実家の維持費はどうするのか。
お金の見通しがないまま施設入居の話をすると、家族の中で不安が大きくなります。
3つ目は、認知症が進んだ時の手続きです。
親の判断が弱くなった時、誰が手続きをするのか。施設や病院とのやり取りを誰が行うのか。親のお金を誰が管理するのか。
ここを考える時に、任意後見契約を検討することがあります。
4つ目は、亡くなった後の財産と手続きです。
実家をどうするのか。預金をどう分けるのか。介護していた家族への配慮をどう考えるのか。亡くなった後に誰が手続きをするのか。
ここを考える時に、遺言書や死後事務委任契約を検討することがあります。
4つすべてを今すぐ決める必要はありません。ただし、親が話せるうちでないと、本人の意思で決められなくなる項目があります。
家族だけでは決めにくい理由
家族で始められることはあります。
通帳の場所を確認する。毎月の支出を紙に書く。病院代や施設費の請求書を残す。立て替えたお金をメモする。
ここまでは家族でも始められます。
ただし、家族だけでは決めにくいことがあります。
親のお金が何年もつかが分からないと、どの書面が必要かを選びにくいからです。
たとえば、施設費で預金が大きく減る見込みなら、親の財産の分け方だけでなく、支払いの進め方も見ておく必要があります。
家族の誰かが介護費を立て替えているなら、その記録をどう残すかも関係します。
制度名だけで書面を選ぶと、必要なものを間違えることがあります。
財産管理等委任契約だけで足りる家庭もあります。任意後見契約まで考える家庭もあります。遺言書を優先する家庭もあります。
先に制度名を選ぶのではありません。親の財産、介護費、施設入居、認知症、相続までを続けて見ます。
介護している家族と、介護していない兄弟姉妹で見え方が違う
親のお金の話では、介護している家族と、介護していない兄弟姉妹で見えているものが違います。
介護している家族は、毎日の支払いを見ています。病院代、薬代、介護用品代、施設費、通帳の管理、役所や施設との連絡。その場にいる家族には、なぜその支払いが必要か分かっています。
介護していない兄弟姉妹は、その場面を見ていません。
通帳の残高が減っている。親のお金がどこに使われているか分からない。けれど、介護している家族に聞くと、責めているように見えそうで聞きにくい。
この違いを小さくするには、親のお金の流れ、介護費、立て替え分、今後の支払い、必要な書面を、同じ資料で確認できる形にしておくことが大切です。
同じ資料があると、話を感情だけにしないで済みます。誰が悪いかではなく、親のお金が今どう動いているかを見られるからです。
書面を考える前に記録を残す
契約書や遺言書を考える時は、記録も一緒に残します。
通帳の残高だけでは、何に使ったか分からないことがあります。
現金で引き出した分は、特に後で説明しにくくなります。
残しておきたいものは、次のとおりです。
・通帳の入出金
・年金の入金額
・病院代、薬代、介護費
・施設費の請求書
・親のお金から払った支出
・家族が立て替えた支出
・親のお金から精算した金額
・親本人が希望していること
・兄弟姉妹へ説明した内容
記録は、介護している家族を責めるためのものではありません。親のために動いた内容を、後から確認できる形にするためのものです。
介護していない兄弟姉妹にも、親のお金がどう使われているか見えない不安があります。同じ資料を見られる形にしておくと、お金の話を人柄の問題にしにくくなります。
すでに対立している時は別の対応になる
ここまでの話は、「まだ家族の中で確認できる段階」の方に向けたものです。
すでに兄弟姉妹との間で強い対立がある場合は、別の対応になります。
たとえば、お金の使い道について返還を求められている場合。相手が弁護士に相談している場合。
この段階に入っている時は、家族で契約書や遺言を考える場面を超えています。争いになっている事案は、弁護士に相談する場面です。
まとめ
親の判断がはっきりしているうちに決めておくべきことは、制度名を選ぶことではありません。
まず、親のお金の流れと家族の状況を見える形にします。
確認するのは、通帳、年金、毎月の支出、介護費、施設費、家族の立て替え、親本人の希望です。
そのうえで、今の支払いを家族が手伝う書面が必要か、将来の認知症に備える書面が必要か、亡くなった後の財産や手続きに備える書面が必要かを考えます。
親がまだ話せるうちは、親本人の意思を確認できます。
だからこそ、親が話せるうちに、親のお金、家族の役割、必要な書面を確認しておくことが大切です。

