親が入院した。施設入居の話が出てきた。介護費の支払いが増えてきた。
その時になって、親のお金が今どうなっているのか分からないことに気づくご家庭があります。
通帳がどこにあるのか分からない。年金がいくら入っているのか分からない。毎月いくら出ているのか分からない。施設費を払えるのかも判断できない。
近くにいる家族が支払いをしている場合、その人に負担が集まりやすくなります。遠方の兄弟姉妹は、親のお金の流れが見えないままになります。
親の財産を確認する目的は、相続で揉める材料を探すことではありません。
親のお金が今どこにあり、毎月どう動いているかを、家族で確認できる形にすることです。
なぜ家族の話が進みにくいのか
親の財産の話が進みにくい理由は、主に2つあります。
1つ目は、残高は見えても、毎月のお金の流れが見えないことです。
通帳の残高だけを見ても、親のお金が何年もつかは分かりません。年金がいくら入り、医療費、介護費、施設費、生活費が毎月いくら出ているかを見る必要があります。
2つ目は、介護している人と、介護していない人で見えているものが違うことです。
介護している人は、毎日の支払いを見ています。病院代、薬代、介護サービス費、施設費、日用品代。その場で支払いが必要になるものを抱えています。
介護していない兄弟姉妹は、その場面を見ていません。通帳の残高が減っていることは気になります。ただ、何に使われているのかは分かりません。
この違いがあるため、家族だけで話しても、支払い方、通帳の扱い、施設入居、将来の相続の話を決めにくくなります。
まず確認するのは財産の全体
最初に確認するのは、親の財産の全体です。
細かい調査を最初からする必要はありません。まずは、どこに何があるのかを家族で見える形にします。
確認するものは、次のように分けます。
・預貯金
・年金
・不動産
・保険
・株式、投資信託など
・借入れや未払い
・毎月の収入
・毎月の支出
・家族が立て替えているお金
ここで大事なのは、相続財産を確定することではありません。
親のお金が、今どこにあり、毎月どう動いているかを大まかに見ることです。
親の財産が見えないままだと、家族の話はあいまいになります。施設費を払えるかも決めにくくなります。介護費を誰が払うのかも決めにくくなります。
まずは、分かる範囲で一枚にまとめます。完璧でなくても構いません。
通帳は残高だけでなく入出金を見る
通帳を見る時は、残高だけを見ない方がよいです。
見るところは、どの通帳に年金が入っているか、どの通帳から医療費や介護費が出ているかです。
次の順で確認すると、親のお金の流れが見えやすくなります。
・年金が入っている通帳
・介護費や施設費が出ている通帳
・医療費や薬代の支払いがある通帳
・公共料金や保険料が引き落とされている通帳
・定期預金や使っていない古い通帳
・現金で引き出した履歴が多い通帳
通帳の残高だけを見ると、「いくら残っているか」は分かります。
しかし、「毎月いくら入って、毎月いくら減っているか」は見えにくいことがあります。
親のお金で介護費や施設費を払えるかを考える時は、残高だけでは足りません。毎月の入金と出金を見る必要があります。
毎月の収入と支出を分ける
親の財産を確認する時は、財産の一覧だけでなく、毎月の収入と支出も分けます。
親の財産が多く見えても、毎月の支出が大きければ、預金は早く減ります。反対に、預金が少なく見えても、年金で生活費の多くを払えている場合は、すぐに不足しないこともあります。
まず、毎月入ってくるお金を確認します。
・年金
・家賃収入がある場合の入金
・保険給付がある場合の入金
・その他の定期的な入金
次に、毎月出ていくお金を確認します。
・生活費
・医療費
・薬代
・介護サービス費
・施設費
・介護用品代
・公共料金
・保険料
・固定資産税などの維持費
この2つを分けると、親のお金が毎月足りているのか、預金を取り崩しているのかが分かります。
同じ表で見ることで、話を数字に戻せます。
介護している側が気をつけること
介護している側は、親のお金を動かす場面が増えます。
病院代を払う。薬代を払う。介護サービスの費用を払う。施設費を払う。親の通帳を預かる。
生活の中では自然なことでも、相続の時には説明を求められることがあります。
特に、現金の引き出しには注意が必要です。
通帳に出金の記録だけが残っていても、そのお金を何に使ったのかは分かりません。親の生活費なのか、医療費なのか、介護費なのか、立替えの精算なのかを後で説明できるようにしておきます。
介護している側が悪いことをしていなくても、記録がなければ説明しにくくなります。
親のお金を使ってはいけないという話ではありません。親のために使ったお金を、家族に説明できる形にしておくことが大切です。
介護していない側が気をつけること
介護していない側にも不安があります。
親のお金がいくらあるのか分からない。介護している兄弟姉妹がどう使っているのか分からない。聞きたいけれど、聞くと責めているように見えそうで言い出せない。
この不安を放っておくと、後で大きくなります。
ただし、介護していない側が最初に求めるのは、相手を問い詰めることではありません。家族で同じ表を見ることです。
責める形ではなく、家族全員でこれからの支払いを整理する形にします。この入口にすると、介護している側も身構えずに済みます。
介護していない側が見せてもらうのは、毎月の支出明細1枚1枚ではありません。まず見るのは、親の財産の全体像と、毎月の収入と支出の流れです。
この2つが見えれば、必要以上に疑わずに済みます。介護している側も、毎回細かく説明しなくて済みます。
家族で確認する時に残すこと
家族で確認する時は、口頭の説明だけで終わらせない方が安全です。
記録に残すものは、細かい帳簿である必要はありません。
まずは、次の内容を一枚にまとめます。
・親の預貯金
・年金収入
・毎月の生活費
・医療費
・介護費
・施設費の見込み
・保険
・不動産
・借入れや未払い
立替えがある場合は、別に記録します。
・誰が立て替えたか
・いつ立て替えたか
・何のために立て替えたか
・いくら立て替えたか
・親のお金から精算したか
・まだ精算していないか
ここまでが、家族で始められる範囲です。
親が分かるうちに確認しておくこと
親の財産を確認する時は、親の判断がはっきりしているかも見ます。
親が自分で話せるうちは、確認できることがあります。
どの通帳を使っているか。どこに保険証券があるか。実家をどうしたいか。誰に通帳を預けたいか。
しかし、認知症が進んだ後では、本人に確認できることが限られます。
通帳の場所が分からない。保険の内容が分からない。誰が支払いをするか決められない。このような状態になると、家族の負担が増えます。
親の判断がはっきりしているうちに、次を確認しておくと、後で話が進めやすくなります。
・通帳や印鑑の保管場所
・保険証券や重要書類の保管場所
・毎月の支払い方法
・通帳を預かる人
・施設入居に使えるお金
・認知症になった時に手続きをする人
・相続の時に困らないよう、残しておくもの
まとめ
親の財産を確認する目的は、相続で揉める材料を探すことではありません。
親のお金が今どこにあり、毎月どう動いているかを、家族で確認できる形にすることです。
通帳は残高だけでなく、入出金を見ます。年金がどこに入り、医療費、介護費、施設費がどこから出ているかを確認します。
介護している側には、説明できる形が必要です。介護していない側には、確認できる材料が必要です。
同じ表を見られるようにしておくと、家族の話を感情だけにしないで済みます。

