親の介護が、そろそろ現実になりそうだ。そう感じ始めた時、頭の片隅に残るのが、お金のことです。いくらかかるのか。親の年金と預金で足りるのか。子どもが出すことになるのか。
こうした問いは、頭の中だけで考えていても、答えが出にくいものです。一度、紙に数字を書き出してみると、見える景色が変わります。
大切なのは、平均額を眺めることではありません。自分の家の数字を出すことです。
親の年金、預金、毎月の支出。この3つが分かれば、親のお金で介護が何年続けられるか、自分で計算できます。この記事では、その手順を順番に説明します。
まず見るのは親の収入と預金
介護のお金を考える時は、はじめに親のお金から見ます。子どもが先に出す前提で組むと、子ども側の家計に影響が出やすくなります。
最初に確認するのは、次の3つです。
‧親の預貯金
‧年金の入金額
‧毎月の生活費
年金は、額面ではなく、実際に通帳へ入っている金額で見ます。
年金からは、税金や社会保険料が引かれることがあります。年金通知書の金額だけで考えると、見通しが甘くなります。通帳の入金額で確認すると、計算の前提が崩れにくくなります。
介護にかかる費用の目安
介護費用には、最初に一度だけかかる費用と、毎月かかる費用があります。
生命保険文化センターの2024年度調査では、介護にかかった一時的な費用は平均47.2万円です。月々の介護費用は平均9.0万円です。在宅介護は月平均5.3万円、施設介護は月平均13.8万円です。
ただし、これは平均です。実際の金額は、家庭ごとに違います。
在宅介護なら、介護サービス費、医療費、おむつ代、交通費、生活費を分けて確認します。施設入居なら、施設の見積書で月額の総額を確認します。食費、居住費、日用品代、医療費、追加費用を含めて見ます。
介護期間も、平均だけで見ない方が安心です。同じ調査では、介護期間の平均は55.0か月、4年7か月です。10年以上介護した人も14.8%います。
親のお金が何年もつか計算する
親のお金で介護が何年できるかは、4つの順番で計算します。
1 毎月使えるお金を確認する
ここでは、親の年金の手取り額を使います。通帳に実際に入っている金額で見ます。
[例]
‧親の年金手取り額 月10万円
2 毎月出ていくお金を確認する
在宅介護の場合は、生活費と介護費を分けて見ます。施設入居の場合は、施設費に食費や居住費が含まれているかを確認します。同じ費用を二重に入れないようにします。
[例]
‧施設費と生活費の合計 月15万円
3 毎月の不足額を出す
計算式は、次のとおりです。
毎月出ていくお金 − 年金の手取り額 = 毎月の不足額
[例]
15万円 − 10万円 = 5万円
この場合、毎月5万円を預金から取り崩すことになります。
4 親の預金が何か月もつか計算する
(親の預金 − 一時費用)÷ 毎月の不足額 = 介護資金がもつ月数
[例]
‧親の預金 500万円
‧一時費用 50万円
‧毎月の不足額 5万円
(500万円 − 50万円)÷ 5万円 = 90か月
90か月は、7年6か月です。この家庭では、現在の条件が続くなら、親の預金で約7年6か月分をまかなえる計算になります。
ここまで出すと、施設に入れるか、在宅で組むか、子どもの持ち出しが必要かを考えやすくなります。
親のお金だけで足りない時に確認すること
計算してみると、親のお金だけでは足りないこともあります。その時も、子どもがすぐに出すと決める前に、確認できる順番があります。
‧親の年金と預金でどこまで出せるか
‧介護保険サービスの範囲で組めるか
‧高額介護サービス費の対象になるか
‧施設入居の場合、食費や居住費の軽減制度が使えるか
‧施設やサービスの内容を変えられるか
‧親の不動産をどう扱うか
‧子どもが出す場合、子ども側の生活を崩さない金額か
高額介護サービス費は、1か月に支払った介護サービスの利用者負担が一定の上限額を超えた時、超えた分が払い戻される制度です。対象にならない費用もあります。所得や世帯状況によって扱いが変わるため、市区町村の介護保険窓口で確認します。
施設入所やショートステイでは、所得や資産の要件を満たす場合、食費や居住費の負担が軽くなる制度があります。実際の対象や金額は、自治体と施設で確認します。
介護サービスを考える時は、ケアマネジャーに予算を伝えます。「いくらまでなら出せるか」を伝えないまま進めると、家計に合わないサービス量になることがあります。
計算結果は紙に残す
親のお金で介護を進める時は、計算結果を紙に残しておきます。
口頭だけで伝えると、後で兄弟姉妹に説明する時に、話がずれることがあります。
紙に残しておくのは、次のとおりです。
‧親の預金額
‧年金の入金額
‧毎月の生活費
‧介護費
‧施設費
‧医療費
‧子どもが立て替えた金額
‧何年もつかの計算結果
通帳だけでは足りません。通帳に残るのは、出金額だけです。何に使ったかまでは、後から見ても分かりません。
親のお金を預かっている人は、何に使ったかを説明できる形にしておくと、自分も家族も落ち着けます。介護していない兄弟姉妹も、同じ材料を見て確認できます。
まとめ
親の介護費用は、平均額だけでは判断できません。
まず見るのは、親の年金、預金、毎月の支出です。毎月の不足額を出すと、親のお金が何年もつかが計算できます。
この数字があると、施設に入れるか、どのサービスを使うか、兄弟姉妹にどう説明するかを考えやすくなります。
出典
・公益財団法人 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
・公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
・一般社団法人 全国銀行協会「不測の事態における預金の払出しに関する考え方について」
・厚生労働省「高額介護サービス費」
・厚生労働省「特定入所者介護サービス費」

